シャツスリーブ(manica-camica)
シャツ・スリーブ(縫製用語の)
掲示板上でmanica-camiciaについての質問を頂けました。manica-camiciaは特に若い方に流行しつつありますので、これについて、もう少し詳しく書くことにしました。ちなみに、このmanica-camiciaはシャツ袖(シャツ・スリーブ)を意味します。ただ、このシャツ・スリーブ、大変分かり難いです。縫製用語上にもシャツ・スリーブという言葉があり、これと混同する方が見えますので、まず縫製用語上のシャツ・スリーブについて。
縫製用語上のシャツ・スリーブは、端的に言ってしまえば、単に袖の付き方を指す言葉です。技術上の方法などはさておき、一言で言えば、腕が肩から真横に伸びている 1.が縫製用語上のシャツ・スリーブです。
カッターシャツが代表的です。カッターシャツは腕が真横に付いています。そのため、腕を下ろすと脇の辺りにシワがよります。そのため、「縫製上のシャツスリーブ」を採用した紳士服のジャケットはありません。
他方、下の2.では袖が下向きについています。これをセットインスリーブと言います。普通、ジャケットを身につける時は立ち居の事が多いですから、最初から袖を下向きにつける事で、着心地とシワの出難さを両立させます。紳士服のジャケットは全てセットインスリーブです。
シャツ・スリーブ(manica-camicia)
このように紳士服でいうシャツ・スリーブとは、縫製用語でいうシャツ・スリーブとは意味が違います。そのため、混同しない様にイタリア語の manica-camiciaという言葉を使うのでしょう。マーニカ・カミーチャ、manica=袖、camicia=シャツ、です。・・・しかし、もうそろそろ服飾用語を適切で分かりやすい日本語で表現する事を考えるべきでしょう。
そのため、紳士服でいうシャツ・スリーブとは主に「シャツ風の見た目」を意味する言葉です。しかし、これは見た目だけに留まらない「機能」を持っています。最近流行のクラシコ・スタイルは細身を強調します。出来うる限り細く細くします。ともすれば、体型以上に細くしたい事もあるわけです。
そこで、肩幅を狭くします。
1.
2.
しかし1.のように、本人の肩幅以上に服の肩幅を狭くすれば、当然の事ながら肩が収まらず、圧迫感があったり、引っかかったような着心地の悪さを引き起こします。
これを回避するため、シャツ・スリーブでは肩パットも外してしまいます。そのため、まるでシャツの様に柔らかくなりますから、収まりきらなくなった肩でも包んでしまいます(2.)。しかも肩の周辺にギャザを入れ、肩の付け根付近に膨らみを持たせ、腕の入る余裕をつくります。結果として、肩付近全体にくしゃっとした感じを出ますから、シャツのような袖になります。そこでシャツ・スリーブと呼んでいるという訳です。
英国調について前回について書きましたが、これもまたクラシコ・スタイルの最終的な形で、特に若い方が非常に好まれる事は間違いありません。