2011年春夏の生地傾向 - 変化
今年は少し変わっています
今季は早い所はとても早く、遅い所はとても遅い生地/サンプルの出回りです。昨日からサンプルが入り始めました。例年では大抵Zegnaが最も早いのですが、今年は随分と遅いようです。当店では最短で2月19-20日まで入荷がありません。
今季早かったのは Loropiana と Holland & Sherry です。この二つは新柄の生地サンプルが届きました。Scabal と Zegna は生地サンプルがありませんが、ほぼ同時にスタイルブックが届きました。どうしても手縫いは時間がかかってしまうので、早い所ほど有り難いというのが本音です。
Loropiana
スタイル提案ではジャケット,スーツともに、比較的はっきりしたストライプ/チェック(ウィンドウペイン)の提案が目立ちます。画紙に色鉛筆で描いたような図もなかなか悪くありません。
色柄では綿の強撚色無地が豊富に揃っていたりと、ジャケット+パンツ スタイルに向く生地が多く取り揃っています。風合いとしては軽いなびきのものが中心でしょうか。非常に軽い植物性素材(麻,綿)が多かったりと、盛夏を考慮したものになっています。
スタイル,素材感,価格共に、時流にあった「妥当」という点を強く感じる取り揃えです。
Holland & Sherry
ハダスフィールド生地の Holland & Sherry は、典型的な機屋さんだけあって、スタイルの提案はありません。最も良く知られた高品位ハダスフィールド生地の代名詞的なところです。ウール50,ポリ40,カシミア10の取り回しが楽なものから始め、Super100〜160の梳毛織物が豊富です。
今季はLoroに等しく、無地の綿ギャバジンが豊富です。今季は各者、ビジネス用途でのジャケット+パンツ スタイルへ注力していることが伺えます。
また、生地サンプルは未だないのですが、特徴的なものとして「しぼ」のあるウールのクレープ地が多く用意されているようです。通常、クレープ地は婦人服に多いのですが、紳士服用に出回り始めました。隔世の感があります。
Ermenegildo Zegna
Zegnaは、今季もやっぱりアグレッシブでした。こういったアグレッシブな提案が強みだとつくづく思います。
スタイルブックの表紙が「生地」を貼付けたものになっています。布張りの本は珍しくありませんが、自社の提案生地を張ってしまう所が面白く、しかもこの生地はシルクのシアサッカー、いわゆるシルク サッカーです (シルク サッカーについてはこちら)。
また、バクチ打ちなことに、このシルクサッカーでスーツの提案をしています。通常、シルクサッカーはパンツに向きません。組織が甘いため「縮み/伸び」が生じやすいためです。これは想像もしませんでした。実用性や経済性はさておいて、面白い提案だと思います。
まだ Anteprima がないために、この他の提案がどうなっているのかは分かりませんが、サッカーをかなり押していることは間違いありません。これもまた、隔世の感があります。
Scabal
先のLoropianaとScabalはとても良く似た雰囲気です。満遍なく偏りの少ない安定した提案です。全体としてはLoropianaにはモダン/カジュアル/女性的なイメージが若干強く、Scabalにはビジネスや落ち着きというイメージが若干強いかもしれません。
ただ、やはりスーツではストライプ、ジャケット+パンツに対する注力が強いような感じがします。ただ、Scabalも生地サンプルが届いておらず、Bespokenしかないため今ひとつ傾向がはっきりしません。
Bespoken は雑誌でもありますが、個人的に面白いと思ったのは「Gentlemen From Congo」です。ポール・スミスで有名になった Gentleman of Bakongo の絡みですが、これら写真の力強さやインパクトは、並々ならないものがありますね。