長く流行らなかったサッカー
流行とは無縁であるものの
Silk SheerSucker
夏向きのチェックやグレンチェックのもの
オーソドックスな紺系統
今年はW杯があります。日本はブラジルとも対戦するそうで、余りといえば余りの強者にどう立ち向かうのか、とても楽しみです。今回は、そのサッカーではなく、SheerSucker、シアサッカーという織物についてです。通常日本ではサッカーと略して称します。
元来はインド由来の柔らかい亜麻布だったそうですが、一般的に目にするのは綿素材です。パジャマやシャツ、カジュアル等に用いられることが多く、日本語では"しじら"と呼びます。
この生地、ジャケット生地としても勿論使います。ただ、この20年来、見事に流行とは無縁です。今年のZegnaサンプルにも入っていません(11SSには入りました 11-02-08)。根強い人気がある生地なのですが、残念なことにご注文の着数も、この20年来、あっても数着と言った所です。数あるジャケット地の中でも、相当不人気な生地と言えるかもしれません。
これには幾つか理由があります。一般に綿素材であり、縞上のしぼ(凸凹)があるために触感が今ひとつです。どうにもごわごわとした感じがします。また、シャツ等の用途が多いため、カジュアルとしての印象が非常に強くなり、高級感に欠けるきらいがあります。また、綿100%ですから、それほど安価である訳でもありません。最近、Cool Biz の関係で良く紹介される様になりましたが、流行りにくい要素を多分に含んでいます。
綿ではなく、シルクでサッカー
ところで、夏服の定番素材にシルクがあります。シワにならず、軽い上に吸湿性も高く、非常に夏向きの素材です。しかし、シルクには大きな欠点があります。吸湿性が高いのは良いのですが、肌に張り付き易いため、この点で快適さに欠けます。そのため、絹の夏服は軽くて良いのですが、麻よりも快適であるとは言えません。この欠点さえ解決できれば、高級感もあり、軽い絹は夏服に持って来いとなります。
という訳で、シルクでサッカーです。サッカーの欠点であるゴワゴワ感はシルクの柔らかさでかなり相殺されます。絹を使えば独特の光沢と高級感もあります。また、サッカーは折り方それ自体の通風性が高いため、絹の欠点であるべたつき感もかなり軽減されます。見事に欠点と長所が混じって良い感じになります。
また、Cool Biz のため、多少のカジュアル感は許容される状態になってきました。シルク・サッカーであれば高級感もありますから、カジュアル感も軽減されます。綿サッカーは相変わらず人気がありませんが、シルク・サッカーはぼちぼちと出る様になってきました。
もし機会がありましたら、シルク・サッカーをご覧になってみて下さい。周囲に着用者はまだ少なく、他にはない独特の風合いや、通気性の良さがある良い生地です。
なにより、綿サッカーや麻より、極めてシワに強い特徴があります (最初から凸凹している上、絹ですから当然なのですが)。そのため、スーツケースの中に丸めて放り込める気軽さがあります。夏場の旅行にはうってつけです。
例えば、夏場の旅行では、外出先からホテルに戻ると凍えるような気分になる事があります。意外に夏場の旅行にはジャケットが必須であったりしますが、その際、シルク・サッカーのジャケットがあれば、スーツケースの中に丸めて放り込めるため、極めて便利です。
また、面白い点が一つあり、最近流通するシルク・サッカーは国産ものが多くなっています。当店の生地も、有名メーカーのものではありませんが、全て国産です。そのため国産ならではの欠点、品質は良いが色柄が今イチという問題があります。国産メーカーには色柄の研究を是非とも。
もし気に入りの色柄がありましたら、一度ご覧になってみると、綿サッカーとは随分違う雰囲気に、きっと色々悩ましく楽しめると思います。