デザインの転換や今季の傾向

ちょっと変わった婦人服とクールビズ

大変なご無沙汰になってしまいました。長い間更新しなかったものですから、文章を書くのにも四苦八苦。調子を取り戻すのに時間が掛かりそうです。取りあえず今回はテーマを決めずとりとめもない雑感です。概ね最近のデザインにつきまして。

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婦人服の世界にオフショルダー (Google Image) というデザインがあります。肩と鎖骨が奇麗に出ますから、女性らしさや色気、華奢さを強調する効果があると言われています。ウェディングドレスなどでよく見ますね。

そのオフショルダーっぽいものが、今夏、カジュアル婦人服で良く見かけることがありました。右の図のような肩を丸く抉ったデザインです。あんまりにも唐突に肩先が丸く抉れるので、どうしても視線がそこに集中します。あんまり露骨に集中するので、少し意地悪なことを考えました。

これが女性らしさ, 可愛らしさを狙ったものであるのは当然として、もう一点、視線を集中させる=他から反らせる効果を狙ったのではないかと思ってしまいました。夏です。体型が露出します。間に合わなかった!、最も問題が少ないところに視線を集めよう、という訳です。何となくずろんとした大きいサイズを見かけることが多かったので、余計にそんな感じがします。

今夏はクールビズがかなり抑制気味だったような気がします。クールビズを押し進めてしまうと体型露出が激しくなるどころか誇張されます。体型に自信がある方は極めて少数ですから、自然とクールビズが緩和される傾向になるのかもしれませんね。この婦人服のデザインをとても良く見かけましたから、なんだかそんなことを思ってしまいました。(女性の方、ゴメンナサイ)。

今季の生地傾向

今季の生地傾向は、昨年とほぼ同じで梳毛ではサクソニー等、紡毛ではフラノなどが組織として豊富です。その他、ツィードのように杢糸 (二色以上の糸をより合わせたもの) 使いもかなり多く、全体として英国調の伝統柄/レトロテイストの重視です。各メーカーともこれらの色柄/組織への注力が顕著です。ポアロの世界ですね。

柄としてはチェックです。チェックが非常に豊富で、今季の本命といっても良いかもしれません。ただ、豊富なのですがお問い合わせも頂いているブラックウォッチ柄がまだ見つかりません。ぎりぎりまで頑張って探したいと思います。

5-6年前まであった光沢重視はまるでありません。ただ、その分、繊維の質が強く表に出るようになりました。上質な獣毛繊維には美しい髪と同じで、柔らかい光沢があります。この光沢は繊維の質そのものの現れであるため、良いものはより良く、悪いものはより悪く見えてしまう状況かもしれませんね。そのため、生地の手当、今季もちょっと頑張って、問屋さん商社さん機屋さんの倉庫を直接回って来ました。今はとても良い時代です。

デザインの突き詰まり

2003年頃、英国調への回帰がある、と更新したことがありました。あの頃はまだ「そのような兆し」程度ではありましたが、今ではもう完全に英国調 Bespoke テイスト, スタイルが突き詰まりつつあります。紳士服はカジュアルや婦人服と異なって、本当に長い時間をかけてスタイルが移動して行きます。細かいディティルやシルエットの微妙な違いを繰り返しながら、別から別へと移行します。

10年は平気で掛かりますから、とてもスロー。ファッション業界ははやり廃りが早いなんて、こと紳士服に限ってはあんまり縁がありません。ただ、このスタイルも完全に尽き詰まりましたので、各所で模索も始まります。"典型"というのは最も重要なものではありますけれど、それを実現した上で"外す"というのが楽しみ, 面白みです。

どう外すか、どうずらすか、欧州デザイナーの提案がとても面白いです。模索の季節です。凡そずらし方にまだ大まかな流れはありません、つまり自由!。これからどのように動いて行くのかとても楽しみです。

ちょっとした予測

図1

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大まかな流れの予測としては、更にテーパードで曲線重視の典型的英国 Bespoke スタイルを守ろう, 近づけようとするものと、大陸系のようにそれを修正して現代的/モダンを取り入れよう, 維持しようとする動きに分かれると思います。

現在、丈が短いものが主流ですが、襟巾が広くなりつつあります。これは縦方向の長さの印象を緩和するものです。図1で描いてみましたが、ちょっと分かりにくい…。要は長方形に占める二等辺三角形の頂点が鋭角だと縦長に見えるというだけの話です。更に下襟が曲線を描くベリードが目立つようになりました。

丈が物理的に短い上に、襟巾も広く曲線的なベリードが増えるとなると、丈が短い印象が誇張されます。そのため、曲線重視と相俟って「丈が長くなる」可能性が高くなります。元々、曲線を強く強調する時代はコート, フロックコートが珍しくなかった時代でもありますけれど、曲線は長くひいた時にバランスが取りやすいという事情もあります。

今回の流行は、イージオーダー/既製服にとっては色んな意味で鬼門です。メーカーの技術力が如実に出るようになると言えるかもしれませんね。

こんな感じの更新でした。また、ちょっとづつ頻度を上げて行きたいと思っています。どうぞ気長におつき合い頂ければ幸いです。

2013.9.14