ポッツ氏の洋服
洋服の変遷が大きい
テレビを見ていましたら、ポッツ氏が紹介されていました。「しがない風采からこの素晴らしい美声」といった紹介のされかただったと思います。
ただ、世に出たポッツさんは、とても色々な洋服を着用しています。そこで、今回はポッツさんの洋服の違いと印象の変化について書きたいと思います。写真は新聞社さんのものなどからの引用になります。
小さすぎるのに大きすぎる
A.はポッツさんが世に出るきっかけになったものです。とても写真が悪く判然としませんが、確かにお世辞にも良い風采とは言えないものがあります。
まず1.の部分で分かるように袖丈が長過ぎます。手の甲を完全に被うほどに長い。当然、着丈も長くなります。全体的に「縦に長い,大きすぎる」ずろんとした印象になります。
同時に「小さすぎる」服でもあります。ボタンを掛けることもできません(4.)。掛けていないのではなく、そもそもこのサイズでは掛かりません。大きすぎるのに小さすぎるという不思議なことが起きます。これは「流行に合致させた」ために生じます。
細い体型に合わせた「細身,タイト」シルエットは、胸囲に対して袖丈/着丈が長いという特徴があります。
既製服でも若干の体型考慮はあるものの、基本的には胸囲に対応して袖丈/着丈が長くなります。極端/単純にいえば右図のような関係です。
恰幅が良ければ、ただそれだけで着丈/袖丈が長くなりすぎることになるわけです。
また、大変恰幅の良い体型の方の場合「胸囲で合わせると腹部が入らない」ということが屢々生じます。つまり、腹部でサイズを合わせると胸囲が必要以上に大きくなります。胸囲を大きくすると、更に袖丈/着丈が余ります。余りに見苦しいので、ポッツさんは腹部収まることを諦めたのだと思います。
その結果、「小さすぎる(腹部が収まらない)のに大きすぎる(着丈/袖丈が長過ぎる」服になったのでしょう。ただ、これは子供服の印象です。
A'IとA'IIでは、どちらがAのポッツさんの印象に近いでしょう。また、A'I, A'II では、どちらが子供の印象でしょう。恐らくA'Iに近く、A'Iに子供服の印象を感じると思います。無理に流行通りだったため、かえって風采の上がらない結果になったというわけです。
服のサイズ以外には、A2.の部分、シャツの衿がよれていて清潔感がありません。また、歌を歌うためお腹の余裕が欲しかったのだと思いますが、A3.のベルトラインが下に押し下げられて、お腹が大きいということを余計に目立たせてしまっています。服それ自体もドレープ(曲線)に乏しいため、ボリュームがなく、高級感がありません。
清潔感がない, 子供のような印象で頼りない, ボリュームがなく軽い、これらのため風采が上がらない印象を生み出したのだと思います
サイズが段々合って来る
B: Iza 2009 6/10 ポール・ポッツ丸の内ライブ「コンバンワ」
今年の6月にポッツさん来日時の写真です。最初期のAに比べれると随分改善され、体にも合って来ています。印象もAに比べれば随分違います。ただ、問題がないわけではありません。
1.の部分でズボンの裾が大幅に余っているにも関わらず、2.の部分で股上が深いことが分かります。歌い易いようにズボンを押し下げたのか、腹式呼吸で大きくお腹を上下させるためにズボンがずり落ちたのだと思います。
サスペンダーを使った方が良いでしょう。ズボンが下がっている結果、当然のことながら、だらしない印象が生じます。
3.の部分で胸が余っているのが気になります。トータルとしてのバランスはAに比べて随分良くなっているのですが、合わせきれていません。腹部の余裕を確保したため、そのまま胸部まで大きくなったのだと思います。この意味で大きい服です。
他方、5.の部分、ポッツさんの姿勢にしては、平行にならず前に持ち上がっています。前丈と呼ばれる部分が不足しています。つまり小さい。Aとは異なる意味で、若干「大きすぎて小さすぎる」服です。
しかし、Aと比べると圧倒的にバランスやサイズ感が良くなりました。ズボンを吊って町中を歩けば、Aのような風采のない印象ではなく、至って自然に見えると思います。Aのポッツさんを営業者とは思えませんが、Bでしたら信じてしまいます。
縫製については、ドレープがなくボリュームが無い点、サイズを合わせきれていない点、バランスが良い点から、イージ・オーダーかそれに類する手法のものだと思います。
随分長くなってしまいました。続きは次回に。