胴と襟との関係

胴と襟との関係

今回は襟と胴の関係についてです。襟はジャケットの中の最も重要なディティールです。このディティールについて、服飾評論家諸氏は、ゴージは肩から9cmが目安などという微妙なことを言いますが、このような細かいことは服の構造を知っている仕立屋が考えれば良いことであって、一般消費者の方が物差しを使って測るなんてことが、果たしてあるかどうか・・・。ですから、気にしないでください。

右図はジャケットの中の最も重要な部分の一つ、襟です。この襟の長さ(Vゾーン)と顔の大きさについて以前に書きましたが、今度は、その襟よりも下の部分について、Vゾーンと胴の関係についてです。

襟は人間の上半身の真ん中に位置しています。ですから、このVゾーンのバランスは、顔の大きさもさることながら、最も大きな影響は胴の大きさの見え方に影響します。右の図では襟のVゾーンの長さが、ちょうど上半身の半分くらいにしてあります。白矢印は肩からウエストまでの長さ、黒矢印は襟の長さを示しています。

では次に、この右の二つの絵の内、いずれの方が「胴」が大きく見えるでしょう。恐らく左側、襟が短い方だと思います。随分と大きく見えるのではないかと思います。しかし逆に、胴が大きく見えるせいで、その上の「顔」は小さく見えないでしょうか。

ここから、二つの事が言えます。1)Vゾーンを小さくすると「胴が大きく見える」ことになるけれど、2)顔は小さく見える事になります。この様な効果を最も有効に生かす事ができる体型は、少し細身で、胴が小さい人、という事になりますね。つまり「若い人」です。

若い人はクラシコスタイルが最も楽しめる

Vゾーンが小さく、体のシェイプラインを奇麗になぞるクラシコスタイルは、基本的に若い人に最も似合うデザインだと言えます。35歳程度を超え、体のラインがどうしても崩れる年齢になると、クラシコスタイルを着こなすには、ある程度の努力がどうしても必要になります。

日本ではバブル絶頂期にアルマーニの様なデザインが全盛になるまでは、ほとんどクラシコスタイルが一般的でした。そのためシャレものは、ベンチプレス等で胸板を厚くし(相対的に胴は小さくなります)、体の線を維持して、ジャケットの似合う体を作ったりしたものです(嘘のようですが本当です)。

逆に言えば、体の線が崩れてしまうと、なかなかクラシコスタイルを着こなすのは難しいです。特にお酒を飲み過ぎるとお腹が出るので、その様な体型だとクラシコはちょっと辛いです。ディティールを大きめに取り、ネクタイやシャツを上手に使い、体の中心を下の方へ移す必要があります。ディティールは印象を変えますが、胴の大きさの見え方もやはり例外なく変わってしまうのです。

2003.3