全て袋縫い,二重ステッチの麻服
夏ですから
麻の三つ揃い
例年、真夏を控えると麻服です。今回はお客様にお仕立てした麻の三つ揃いです。クールビズのお陰で、徐々に商用や公で麻服を着用しても良い雰囲気になってきました。
今回の麻服の特徴は「裁ち目がない」点です。全ての縫い目を袋縫い/巻縫いにしている上、二重にステッチしています。これは過去のジーンズと類似の縫製手法で、股の部分が縫製しにくい欠点があるものの非常に強くなります。なお、某ジーンズでは巻縫い箇所がお尻だけで、既にそれ以外は省略されてしまっていました。
また、麻は着色しにくいので水洗いで色落ちしやすいのですが、この麻服地は生成り、洗えば洗うほど白くなります。勿論、接着芯も使っていません。植物繊維にしてはボリュームも奇麗に出すことができました。
ということで、デザインは現代的ですが、縫製は洗濯機が一般的でなかった頃、徹底的に水洗いに強い構造の再現に近いものになります。ジャケット裏地はウール/キュプラ混合です。裏地メーカーさんが好きな方ということで、過去の雰囲気をもった裏地をわざわざ復活させました。ちょっと珍しい裏地です。光沢と起伏感のあるかなり似合いの裏地です。
ディティル
アウトポケットが写真に全く写らなかったので、ラインをなぞって見ました。バルカ風の少し湾曲した形になっています。生地は Zegna Linen 100% です。
ジーンズよりも洗って大丈夫
今回のズボン|ジーンズ
裁ち目
裁ち目とは布の端, 図の点線部分のことです。シャツやセーターで、布の端から糸が解れてくる経験はどなたでもお持ちだと思います。そのため、この裁ち目を処理することは、耐久性を上げる最も基本的なことになります。
尤も、作業着でもなく、洗濯機で丸洗いすることのないスーツなどでは、厳密に裁ち目の処理をすることは余りありません。
他方、作業着などで乱暴に洗うことを想定している場合には、裁ち目処理を施して頑丈にします。古いタイプのジーンズの大きな特徴でもありました。
ただ、今ではジーンズも裁ち目処理を裁ち落としで済ましてしまうようです。本来は袋縫いだった筈のジーンズも、U社のものはロックミシンで止めてあるだけでした。
ということで、この麻のパンツは全部袋縫い(当然、内股も袋縫い)なので、U社ジーンズ以上の縫製強度があります。最近、内股の袋縫いズボンは本当に滅多に見なくなりました。しかも紺は色落ちしますが、生成りの麻は洗えば洗うほど奇麗になるので、水洗い耐性もU社のジーンズ以上です。
ちなみに写真はズボンですが、ジャケットも裁ち目を全て袋縫いにしています。勿論水洗い可能なのですが、仕上げに手間がかかり慣れが必要です。でも不可能ではありません。
かなり多様に着用
三つ揃いですので、色んな着用が可能です。
ジャケット+パンツのスーツとしてネクタイ着用するのは勿論、ネクタイを廃してストールも悪くありません (盛夏にはちょっと辛いですが)。
シャツ剥き出しは下着剥き出しと同じですので、麻のベストとカラーシャツ, 柄シャツと合わせれば、涼しげで盛夏にはかなり快適です。(ベスト裏地もウール/キュプラ混合です)
本当は、ベストに暖色系統の鮮やかなシャツをあわせたかったのですが、こういう時に限って持ち合わせがないところが残念です。
もうすぐお納めしてしまいますが、仕立て上がって人台に掛けておく内に自分でも更に気に入ってしまい、何というか自分用に欲しいのですけれど、どうしたものでしょう。