テレビ出演者の方の服

テーラーになってからずっとしたかった事

10年ほど前に廃刊になってしまいましたけれど、テーラー向けに「洋装」という業界雑誌がありました。私はこの雑誌を定期購読しておりまして、その中での企画に街角の紳士服姿をあれこれ検討するというものがありました。

熟練のテーラーが服装から職業を推測したり、体型とデザインの関係、配色やコーディネート、仕立てのレベルに検討を加えていくというものです。いつか私自身、挑戦してみたくて仕方がありませんでした。ただ困った事にこれはなかなか出来ません。街角を歩く方の写真を頂くことはできませんし、そこでテレビに写る方で行ってみたく思いました。

ただ、著作権上、これが許されるのかどうか、調べてみても今ひとつ確信が持てません。もし問題等がございましたら、どうぞご指摘、お叱り頂けますと幸いに存じます。また、もしお写真を提供して頂ける方がございましたら、真にありがたく存じます。出来得るかぎりのアドバイスを申し上げる事もできますよ。

まずは私の服で

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この服はゼニア・トラベラー(¥65,000)で、縫製は機械+手縫い(¥68,250)です。イタリア風の柔らかい仕立てで、生地はトラベラーですから、若干固めです。完全な手縫縫製を行った場合に比べれば、若干問題が残っていて、これでも完全とは言えませんが、かなり奇麗に出来上がりました。

まず、最大の問題は(A)の場所、裾です。この裾はステッチが厳しくありすぎて、外向きに若干跳ね上がっています。実際に着用上はほとんど分かりませんが、写真では分かってしまいます。

次に問題がありますのは、(B)で、これも若干、余っています。掲示板で見事にご指摘頂きまして、まことにありがとうございました。正解です!。実際に着て分かる程ではありませんけれど、写真ではやはり写ってしまいます。なかなか写真は恐ろしい機械です。

最後に、(C)なのですけれど、これは正当と言われる着こなしに比べますと、袖丈が0.5cm程長く、シャツが1cm短いため、袖からシャツが見えていません。ただ、この長さを好まれる方もみえますので、これはやはりデザイン上の好みの範疇に入ってしまうかもしれません。

典型的な大きすぎる服

TV東京「開運! 何でも鑑定団」

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まずはこの方は典型的に大きすぎる服を身につけて見えます。本来のサイズから1〜2サイズは明らかに大きいものになっています。この方は恰幅が良いですので、腹部で合わせざるを得なかった結果、腰・胸・肩の全てが余る結果になっています。

一見分かりにくいですけれど、腰は未だ絞れますので、もっとすっきりしたシルエットにすることができます。また、胸と肩も余っており、そのためのシワが出ます。

袖丈は短く見えますが、これはかなり長く、手を下ろせば恐らく手の甲が隠れる程になる筈です。長い袖丈がここまで短く持ち上がってしまうのは、サイズが大きいため鎌深が深すぎるためでしょう。手を前にやった途端、通常よりも極端に持ち上がってしまっています。腕を下ろせば長過ぎ、上げれば短すぎるという状態ですね。

逆に一見短く見えます「丈」は、実はこれで足りています。ただ、前丈(前身頃の丈)が足りません。そのため上着の裾が床と平行にならず、また前身頃全体が前方に向かって突き出したように一直線になっています。体の特徴を悪い方向に強調しています。

パンツにも補正がありません。これでは折れ目線が外向きに逃げすぎています。パンツの丈が長過ぎるためはっきりしませんが、このパンツでは恐らく折れ目線が靴の「横」に来るほど逃げる筈です。

恐らく、身につけておられる方も、相当不快に感じておられると思われます。典型的な体にあっていない大きすぎる既製服です。

典型的な大きすぎる服 2

NHK「あすを読む」

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この服も典型的な大きすぎる服です。肩幅が広く、鎌深が深すぎます。更にアーム・ホール(腕刳)が大きすぎるため、座っていることを差し引いても、(A)の部分に多量のシワが出ています。

またこの方は前肩ですので、背中部分が小さすぎ、前身が大きすぎます。その結果、(B)の位置にたすきシワが出ています。前肩補正が全くなされていません。

また、この方は右肩が大変下がっておられます。右利きの方に多く見られるのですけれど、この方は少々、それが強く出ています。襟も肩の傾きに引きずられ、歪になっています。右撫肩の補正がありませんので、全体に傾いだような印象になってしまっています。補正がないため、かえって右撫で肩であることを強調してしまっているわけです。

このお二方は、もし誂えました服をお召しになれば、確実に今までとは相当異なる印象になること間違いありません。

2005.01.21