糸巻き
昔はどこの家にもあったような
糸巻き戸棚
今回は…至って何ということもない更新です。何か得るものがあったり、世の中の役に立ったり、人生への何らかの示唆を見いだせたりとか、そんなものは一切ありません(いつもだってありませんが)。今回は糸、ではなく「糸巻き」につきまして。
テーラー、仕立屋とは切っても切れない縁あるモノの一つが「糸」です。…当たり前ですが。糸には色んな種類がありまして、素材では絹糸や綿糸にナイロン糸、用途で言えばステッチ糸にミシン糸、当然太さも様々なものがあります。大量に使う仕付け糸は、新聞紙でくるんで束ねていたりもします。その結果、大抵の仕立屋は糸で溢れます。
右の写真の糸巻き戸棚は、ここ最近ばたばたしていた結果、かなり管理不行き届きです。早く整理して片付けたいのですが、なかなか出来ません。困ってます、とても恥ずかしい。あまり使わない糸は、他の棚や引き出しにしまっているので、いざ使おうとしたときに何処にしまったか分からず、困ってしまうことも時々あります。
糸で溢れ買える上に、糸屑でも溢れ帰り、仮縫いを解いたりすると仕付け糸が床に散乱します。しかも布を触りますから、奇麗にしているつもりでも布埃がまっているらしく、作業場に置かれたPCは、酷い勢いでほこりを被ってしまいます。
どこかに転がっている糸巻きで遊ぶ
糸巻き
ロウ (鑞)
糸巻き車
糸巻きはいつも何処かに転がっていますので、仕立屋の子供は、大抵糸巻きを使って遊んだことがある筈です。この糸巻きは誰もが知っている (多分) 京都のフジックス タイヤ印の絹ミシン糸です。詳しく言いますと、50番 色60 800mの成れの果て。
ということで、糸巻き車を作ってみます。この糸巻きは厄介なことに穴の中に中空の部分があって、ゴムを通しにくいことこの上ありません。糸巻き車を作る人のことを考えて欲しいものです。
ちゃんと割り箸のところが滑らないと動きませんから、ロウを使います。右の怪しげな物体が「ロウ」です。ロウソクの鑞ですね。糸の滑りを良くするために使います。普段は布に包んでありますけれど、何が何だか分からないので剥き出しにして見ました。剥き出しにしても、何だか分からないのはご愛嬌。
これも、仕立屋にある定番のものです。別に蝋燭でも良いのですけれど、大きいものの方が使い易いくなります。大きいだけに中々減りません。昔、これに火を近づけて溶けるかどうか試そうとしたところ、父の頭の方に火がついたのを覚えています。当然、私の頭にも火花が散りました。
何というか、近代的でも合理的でもない道具を使う職業だと、ひしひしそんな感じがしてきます。もう何年も前に、テーラーを集めた講習会で、何処かの大学の先生が「合理性とは無縁の」と言っていたのを思い出しました。
…褒め言葉だったのか皮肉だったのか。分からない振りをしておきます。
ところで、糸巻きとは全く関係がないのですが、ちょっとした工夫を思いつきました。美麗な腕の湾曲と、特に「細い腕」を強調した良い線が思いつかなかったのですが、これなら何とかなるような気がします。最近、何だか思いつくことが多くなってきて、とても楽しく思います。…糸巻きと関係ないにも程がありますね。