1938年 John Cooper & Son のサンプル

やっぱり足は使うべきものでした

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記事としては久しぶりの更新になりました。今回、東京での展示会に併せ、名古屋,岐阜,大阪の機屋さん羅紗屋さんを直接回って、倉庫や工場にも入らせて頂きました。忙しい中、小さなテーラーにも関わらずお相手頂きまして何とも有り難いことでした。

こういうことをするのも久しぶりで、やはり足は使うものだとつくづく思います。流量や単価の関係上、表にはなかなか出てこない生地など色々と見せて頂きました。そんな中、商品ではないのですけれど、某羅紗屋さんの社長氏から一際珍しいものをお借りすることができました。38SS,AW John Cooper ジョン・クーパーの生地見本です (大きい写真

この羅紗屋さんの社長氏は John Cooper で数年ほど働いた経験があり、その退職時、廃棄されそうになっていたこのサンプルを貰い受けてきたそうです。社長氏の宝物です。宝物にも関わらず快くお貸し頂きました。感謝しきりです。

テーラーからすると、生地見本は毎年更新されるべきものであるため、残しておくという感覚が余りありません。これはとても珍しいものであると思います。ちなみに、この生地見本帳は巨大です。比較対象を並べておかなかったのが失敗ですが、見たことがないほどに巨大です。

生地質や風合い

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掲載されている生地は、現在のものとは似ても似つきません。けれども、私が子供の頃〜学生時代から20代の頃 (40年〜50年前)、周囲に溢れていた生地の風合いにとても良く似ています。ジョン・クーパーですから、生地質は高品位, 風合いや色柄は英国伝統の部類に属します。

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感覚的な話で申し訳ないのですが、紳士服地は日本の高度経済成長期の前後で「大幅に変わった」という印象があります。この頃を境に、国の近代化政策が繊維の世界にも行き渡り、織機や整理加工技術に変化があったためかもしれません。このサンプルは、「その前」の雰囲気そのものです。

全く現代的ではなく、これらの生地を復刻したとしても、満足いく結果になるとはまず思えませんものの、「昔はこうであった」というのを現に確かめられるというのは何とも良いものです。

昔は良かった、本当に?、どの程度?

「昔は〜であった, 良かった」という言葉は色んな雑誌や本にもあり、当サイトでも何度か書いています。ただ、懐古趣味も混じって何割か増しになっていることも多々あります。紳士服業界の特性でもありますけれど、私でも時折、これは権威主義的ではないか? と何となく思うこともあります。

ということで!、社長氏から許しを得ることが出来まして、東京の展示会にお持ち致します!。当サイトでも時々書いている「往時の雰囲気」や「現在との違い」、伝統的な良い生地とは何を意味しているのか、等々のご参考になりましたら真に幸いです。

2013.2.2