生地に使われる繊維の種類
様々な繊維
仕事柄、非常に多くの繊維に触るのですが、余り繊維種や分類などを意識したことがありませんでした。少し簡単にまとめてみました。
赤いものは、紳士服地やシャツ地として明らかに触った記憶のあるもので、補足が表示されます。それ以外は判然としません...。これは某メーカーから頂いた資料に手を加えたもので、他にもまだ、色々使われている獣毛があるのですが(Quciuk/キヴィアックやGuanaco/グァナコ等)、当座は記録だけを。
天然繊維 | 植物繊維 | 種子毛繊維 | 綿花 | エジプト綿 |
海島綿 | ||||
スーピマ綿 | ||||
ピマ綿 | ||||
ペルー綿 | ||||
インド綿 | ||||
米綿 | ||||
カポック綿 | ||||
パンヤ綿 | ||||
籾皮繊維 | 亜麻 (リネン) | |||
苧麻 (ラミー) | ||||
黄麻 (ジュート) | ||||
大麻 (ヘンプ) | ||||
葉脈繊維 | マニラ麻 | |||
サイザル麻 | ||||
ニュージーランド麻 | ||||
果実繊維 | コイア | |||
動物繊維 | 絹 | 家蚕絹 | ||
野蚕絹 | 柞蚕絹 | |||
天蚕絹 (山繭絹) | ||||
獣毛繊維 | 羊毛 | メリノ・ウール | ||
リンカーン・ウール | ||||
シェトランド・ウール | ||||
サウスダウン・ウール | ||||
シロップシャー・ウール | ||||
レスター・ウール | ||||
ロムニー・ウール | ||||
マーシュ・ウール | ||||
チェビオット・ウール | ||||
タスマニア・ウール | ||||
ボタニー・ウール | ||||
サキソニー・ウール | ||||
山羊毛 | モヘア | |||
カシミア | ||||
山羊毛 | ||||
ラクダ毛 | キャメル | |||
ビキューナ | ||||
アルパカ | ||||
ラマ | ||||
兎毛 | アンゴラ | |||
羽毛 | ガチョウ,アヒル | |||
鉱物繊維 | 石綿 |
エジプト綿
高級綿の代名詞です。超長綿のコーマ糸を使った生地は特に高品質です。高級素材の一種にも関わらず、ブランドさえ問わなければ、なぜか非常に安価に入手できたりします。
海島綿
Queen of Cotton, 言わずと知れた最高級の綿です。シャツ生地としては海島綿協会加盟のメーカーが生産しています。
紳士服地としては大きく生産していた藤井毛織が倒産したため、現在新規の入手は比較的困難になっています。旧柄やストックとしては、各店に残っていると思います。
亜麻 (リネン)
いわゆる「麻」です。正確には亜麻で、アイリッシュ・リネンが高品質なものとして知られています。欧州では地中海周辺で生産が盛んだったと思うのですが、現在どうなっているかは不明です。
なお、欧米では「亜麻」の方が「絹」より格が高くなります。
苧麻 (ラミー)
いわゆる「麻」です。日本では小千谷縮/越後上布の原料として良く知られています。とんでもなく歴史の古い繊維で、6000年前から栽培の痕跡が残っているようです。
非常に幅広い用途に使われますが、高品質なものは亜麻に勝ります。ただ、この超高品質ラミーも、徐々に入手が困難になりつつあります。
麻,大麻 (ヘンプ)
「本来の麻」です。外来種の亜麻,苧麻よりも大きいため、大麻と名称が変化したとのこと。ヘンプ製品は現在Zegnaに見るくらいで、非常に少ないように思います。麻には色々ありますが、日本で繊維製品に「麻」と表示できるのは「亜麻/苧麻 (リネン/ラミー)」だけです (家庭用品品質表示法施行令 別表 1-1)。
家蚕絹
お蚕さんから取れる通常の絹です。品質の高低が激しいですが、今も昔も高級繊維であることには変わりません。非常に長く引ける (繭1つから1000m以上) 特徴があります。繊維自体が高価なので、織りの密度と価格が比例しやすい関係にあります。
天蚕絹 (山繭絹)
山繭蛾(天蚕蛾)から取られます。本来は「野蚕」の通り野生種ですが、現在は飼育されています。極めて希少な繊維です。家蚕絹よりも強い光沢と聴力が特徴です。
非常に美しい「緑色」の繭をしています。昔は山でちょくちょく木の枝に掛かっているのを見掛けましたが、最近は余り見なくなりました。
メリノ・ウール
スペイン原産 メリノ種の羊毛です。ウールは獣毛全般の意ですが、紳士服地でウールと言えば多くがこの品種です。国産生地の場合、大抵はオーストラリア産で、国産生地もオーストラリアから生地原毛を輸入して生産しています。
シェトランド・ウール
英国スコットランド北東にあるシェトランド諸島原産のウールです。シェトランド・シープ・ドッグでも有名かもしれません。基本的に服地はその地方の気候に最適です。この生地は寒く、風が強く、湿度が高い環境でのカントリー・ジャケットに最適ですが、最近あまり見掛けません。
チェビオット・ウール
英国純血種の羊です。ツィード生地として使います。ツィードに使う割には細番手で光沢のある生地になります。
シロップシャー・ウール
英国低地種で、かなり見た目の変わった羊です。顔と耳と脚が黒く全身は白い毛です。柔らかい手触りとされており、梳毛に使うのですが、紳士服地としては固い部類に入ります。個人的には「ガリ毛」と呼んでいたりします。これも最近は少なくなりました。
タスマニア・ウール
そのような品種があるわけではなく、タスマニア産のメリノ種ウールです。オーストラリア全体の3%しか生産されていない希少品です。
品質はSuper Fineと呼ばれる細番手を安定して産します。細番手を安定して産するからこそ高級繊維の代名詞になったのですが、同じ番手のものより勝るかどうかは不明です。
ボタニー・ウール
羊の品種名ではなく、オーストラリア ボタニー湾にちなんだ産地名に基づく名前です。メリノ種の羊毛の中でも、特に良質な物を指して言います。
サキソニー・ウール
メリノ種ですが、ドイツ ザクセン地方で産出されたので、このように名付けられます。ただ、ザクセンの羊毛が現在でも多いとは思えませんので、実際の流量は良くわかりません。
モヘア
アンゴラ山羊の毛です。主に夏/高級生地に使います。独特のシャリ感があります。ウールより固いですので、通常はウールに混合して使います。トルコのアンカラ(アンゴラ)が有名な産出地です。
カシミア
言わずと知れたカシミアです。カシミアの品質は織りの密度と加工で決まります。安価なカシミアは密度が低い = 弱いことが多々あります。シルクと同じ理屈ですね。パシュミナはカシミアを糸状にした繊維素材、又はそれで出来たストールのことです。
キャメル (ラクダ)
らくだです。ハリソンズ・オブ・エジンバラ/Harrisons of Edinburgh のものが有名だったりしますが、ドーメル/Dormeuilやドラッパーズ/Drapersにもあります。主にコート地に使います。
現在は随分と少なくなりましたが、かつては下着に使ったほどです。かつても高級生地ですから、昔の人は下着にx万円近く掛けていた感覚です。昔の方は贅沢でした。
ビキューナ
ヴィキューナ,ビキューナと言いますが、本当はビクーニャというそうです。見た目はラクダのようなラマのような生き物です。
アンデスの6,000〜7,500m高地に生息し、毛の刈り込みは2年に1度、1回で250g〜350gという極めて希少性の高い繊維です。ビキューナ100%ともなると価格が恐ろしいことになります。
絶滅危惧種ですが、繊維が産業に資するということで、地元民に収益が保障されることになり、保護が活発化、10万頭まで増えています。
アルパカ
かつては高級裏地として使われていました。最近では滅多に見掛けません。裏地で芯のような役割を果たすことができるため、かなり便利に使ってしまいました。とても後悔しています。
服地として主要な所では、ドーメルがこの繊維を使った生地を生産しています。ビキューナ, アルパカ, ラマは全てお仲間です。
ラマ
コート地に使います。品質の高低が激しいのですが、良いものは紛うことなき高級品です。Zegnaで2005年にかなり良いコート地がありましたが、あまり見掛けず、今年も無かったようです。
アンゴラ
アンゴラの名のつく動物にはアンゴラ山羊とアンゴラ兎がいます。モヘアと表記する場合はアンゴラ山羊で、アンゴラと表記する時は兎です。紳士服地としては滅多に使いません。三星毛糸が生地を織っています。