06AWの生地傾向

06AWの生地傾向

お盆を過ぎまして、徐々に生地が揃ってきました。今年は少し欲張り過ぎてしまいました。サンプル等々、覚えきれるかどうか不安です。問屋さんや商社さんに「テーラーでは珍しい部類の多さ」と言われてしまいましたが、これは褒められたのか、それともからかわれたか…。

さておき、今年の傾向です。今年の傾向は主に「グレー無地/黒」などのモノトーン、伝統的で非常に長く「詰まらない」と言われてきた色柄、或いは繊細なストライプであるようです。特にグレーの傾向は非常に強く、お盆を過ぎた途端、かなり生地が動いているようです。

グレー

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今年は無地のグレーなど、非常に大人しく実務家的な印象がありながらも、高級感のある生地が非常に強く出ています。これはどのメーカーでも力を入れているようです。

Bird's Eye

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Glen Check

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色合いでは広くチャコールグレーから薄いものまで、かなり幅広く出回っています。柄については、バーズ・アイ(Bird's Eye)や、ピン・ヘッド(Pin Head)など、古いタイプの柄の復活が目立ちます。

両者は定番柄の一種で、流行とは無縁に「ぼちぼち」出るタイプの色柄だったのですが、今年は非常に良く見る上、流量も多くなっています。特にBird's Eye、これは恐らく若い方にとっては新鮮に感じられると思います。右はBird's Eyeですが、Pin Head は Bird's Eye の更に細かいものを言います。

その他、至って標準的なグレン・チェック(Glen Check)や、大人しいストライプなど、グレー系統では奇を全く衒わないシンプルな柄が好まれているようです。非常にオーソドックスで、スーツの本流という雰囲気でしょうか。画像では誇張させていますが、実際には上の写真のようにかなり穏やかで大人しい印象になります。

また、生地の種別では、グレーのシャークスキン(shark skin)が出るようになりました。この生地はかなり久しぶりです。2-30年近く流行とは無縁ですが、どうやら復活の兆しを迎えたようです。シャークスキンも伝統的で、かつての定番生地です。

杉綾、ヘリンボーン/herring bone

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グレーはスーツ地ですが、次はジャケット地につきまして。ジャケット地でも、非常に馴染み深かったり、定番中の定番と言える生地が各メーカーに多いようです。今年はかなり伝統的な色柄の復活が強く見えます。

herring bone

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Casquette

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杉綾は伝統的な色柄のジャケット地です。ハハハと柄が並び、杉の葉に見えることから日本語では杉綾、英国ではニシンの骨に見えるということで herring bone です。

各テーラーは概ね好みの生地というのがありまして、何も考えずに仕入れたりする生地があります。私の場合、この杉綾がそれに当たります。今まで気がつかなかったのですが、家人が言うには「毎年必ずある」ため、「何年も売れ残っているのかと思った」のだそうです。…酷い話です。この生地の人気が強くなってきて、私は大変嬉しく思います。

杉綾には色合以外にも微妙な変化があり、間隔の広いものや狭いもの、織を変えてストライプのように見えるものなど多様です。上記写真は新旧を右左に分けて並べてあり、メーカー4社が交じっています。

基本的にカジュアルですので、ハンチング/カスケットなどの狩猟帽と合わせると映えると思います。

サキソニーとストライプ

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これは、目立って流行しているということもありませんが、徐々に見かけるようになってきました。これも古いタイプの生地です。

サキソニー(サクソニー),Saxonyはドイツのザクセンのことです。もともとドイツ・メリノ種の羊毛を使っていたことからこの名前があります。一般に上質の生地で、短い起毛があり、手触りが良く、柔らかいといった特徴があります。丁度、メルトンとフラノの中間のような生地です。

フラノ(フランネル)ほどしっかりした生地は、重く着難いですので、流行にはそぐわないのですが、このサキソニーはあり得るかも知れません。3年程前から徐々に流量が多くなっているようです。

特に細番手のものは、柔らかい上に手触りが良いといった特徴を有します。はっきりした太めのストライプ(チョーク・ストライプ)、或いはストライプ間隔が広めのものが主流です。今年の秋冬は、これはもうはっきりと復古的傾向を有しています。今までゆっくりと遷移していましたが、かなり明快になったようです。

B/W

最後に、今年はグレーの流行と共に、スーツではモノ・トーンも強くなってきました。これにつきましては次回に

2006.08.20