素材名辞典(現在70項目)

素材名辞典(現在70項目)

アストラカン(astrakan)

ソ連のカスピ間に臨むアストラカン地方に産する子羊の毛皮に似せられて作られた、表面が柔らかい巻き毛の羽毛で覆われた厚地の織物

アムンゼン(Amunzen)

昭和の初め頃、愛知県でセル(戦前の2幅の和服地 seru)を梨地組織におり、これを捺染したものが作られ、大いに好評を博した。その頃アムゼンが南極探検に成功したので、その名を取って命名されたといわれている。

アルバトロス(albatross)

ゴルファーの夢の一つ(冗談です)。アルバトロスとはアホウドリの事で、その胸毛に似ている柔らかい織物。

ウーステッド(worsted)

細かい梳毛双糸で緻密に織り上げ、剪毛して布肌をはっきりとあらわしたもの。イギリス、ノーフォーク地方のウーステッドで、600年ほど前に創製された。

ウエスト・ポイント(west point)

アメリカの地名で、陸軍士官学校のあるところ。この学校の制服に使われている事から来ている。綿コーマー糸を使用した3/1稜織物。アメリカではこの規格の織物をユニフォームツイルといい、高級作業服、運動服に使われる。

オート・ミール(oat meal)

オート・ミール・クロスともいう。オート・ミールとはからす麦の実を粥状にしたもの。粒状のオート・ミールに似た柄ということでこの名前が。日本では猫の足跡に似ているところから「猫足」とも呼ばれる。

お召

御召縮緬(おめしちりめん)ともいわれ、わが国独特の織物で、その名の起源については諸説ある。11代将軍徳川家斉が好んで着用していたことから、この名ができたと伝えられている。家斉は濃い青地に白の細かい経縞をいれ、約6mm間隔に緯を区切った格子縞のものを常にきていた。これを御召縞、御止縞、法度縞といって一般人の着用を禁止していた。その後これを真似て、紺地に茶や鼠で細かい経縞を入れたものを作ったところ、大いに好評を博し、この名が全国に広まった。

ガーゼ(gauze)

元来、薄い織物を総称してガーゼといった。ガーゼの名は、昔、このような薄い織物をおっていた町、パレスチナのガザ(Gaza)に由来するといわれている。

カシミヤ(cashmere)

カシミヤ山羊(最高級はパシュミナと呼ばれる種)の毛で、原産はチベットといわれる。18世紀に東インド会社によって、カシミヤ織物は西欧にもたらされた。当時それは「カシミール(Kashmir)」渓谷地方で作られたショールであったが、地名がそのまま原料の名となった。なお、カシミールという地名は、インド神話の造物主である「カシャバ(kasyapa)」神の名かららしい。

ギャバジン(gabardine)

通称ギャバ。稜線が約45度以上の角度をした2/2綾織物。19世紀の末頃、イギリスのバーバリー商会が梳毛糸や綿糸を用いたギャバジンを、この名で発売してから、その名が広まった。gaberdine をもじったのか、誤ってgabardineと綴ったのかは不詳である。gaberdineは「緩やかな形の外套、労働着」をさす。この語源は中期高地ゲルマン語「wallevart(巡礼者)」からで、古フランス語「gauvardine」、スペイン語「gabardine」になった。意味はいずれも、「僧侶や巡礼者が着た長着」。それが16世紀に英語に入ったものである。

クレープ(crape)

本来は絹織物であって、古代中国で開発された強撚糸の織物である。9世紀には現イタリアに輸入されていたという。本来フランス語の「crepe」が入ったもので、その語源はラテン語の「crispus」頭髪などの縮んだ毛、巻き毛→皺にする、である。

グレン・チェック(glen check)

グレン・アーカート・チェックを略した言葉である。グレンは谷間という意味で、グレン・アーカートはスコットランドのエルウィック川を挟む谷間の名称である。このチェック柄はその地方で産したためにこの名がある。

コール天(corduroy)

コール天は、英語のコーデュロイであるが、フランス語の Cor De Roi (王様のウネ)から転化したもの。昔、王城の番人にこの布地の服を着せたところ、非常に美しく立派に見えたので、このように名付けられたと言う。この織物は最初はフランスで考案され、次いでイギリスでも作られた。わが国では明治24年頃、吉田亀寿氏が輸入コール天をまねて製織し、明治30年頃に初めて工業化されたもので、ベッチンより先輩である。

サージ(serge)

綾線が約45度の角度をした2/2綾織物のことで、梳毛糸を用いたサージは12世紀頃から作られていたと伝えられている。最初、イタリアで創製された絹毛織物の sergea から名付けられ、そのご、イギリス、フランスなどで毛100%になったという説と、ラテン語の sepiea (絹)という語から始まったと言う説がある。

サクソニーツイード (Saxony Tweed )

ツイードは元来、疎剛な布味のものであるが、特に祖父棚ものを作るために、ドイツのザクセン地方の羊毛を用いていたのでこの名がある。ザクセンは古代ドイツ地方の種族の名前で、「ザクセン saxsan (石斧)」という武器を主に使用していたことによる。

サッカー (seersucker)

サッカーはシャーサッカーともいい、経糸のシマ目にあたる部分を折り方などによって縮ませて波上の凹凸をあらわした織物(JIS)である。語源はヒンドスタン語の sirsakar(砂糖入りの牛乳)で、もとは軽めの柔らかい麻布だったと言う。様々な方法で作られるが、製織するときの経糸の張力差で作る方法の綿織物は昭和の初期頃から盛んに生産され、相当量輸出された。

サテン (satin, sateen)

朱子、綸子とも言う。英語で satin と書いたときは、絹やレーヨンのようなフィラメント使いのものをさし、綿朱子などのときは sateen と綴られている。朱子は中国で発明され、サラセン文化の最盛期の頃アラビアを経てイタリアに渡り、イタリアで zetin といわれ、さらに転化して satin になったという。わが国では天正年間(1573~1592)に京都の職工が中国の技法に習って作ったのが始まりとされている。

シール ( sealskin cloth )

シールスキンともいう。毛足が長く密度の粗いタテパイル織物で、1878年にイギリスのヨークシャーでアザラシ(海豹 seal)の皮のように、パイルを絹で作ったのが始まりと言われている。

ジーンズ (Jeans )

本来は「ジーン Jean 」と呼ばれた綿織物で、かつて北部イタリアのジェノバから輸出された。主として2/2斜紋の藍による無地染め織物であった。「ジェノバ」は10~15世紀当時「ジェン Gene 」、「ジャン Jane」などと書いた。このことから英語で「ジェノバの綿綾織物」を指す言葉として「ジェノイーズ genoese」等となり、なまった上に省略されて綴りもかわり「ジーンズ」となった。

絞り

絞りはわが国の古代3染法の一つで、纐纈(こうけち)あるいは結機(ゆうはた)ともいわれ、飛鳥時代に既に見られた。奈良時代に大いに発達して、正倉院御物の中にも多く保存されている。中国では千年前の唐代に宗妃が考案したと伝えられ、また一説にはインドから中国そして日本へも伝えられたとも言われるが、発達させたのは日本である。上古の絞りは絹または麻織物に施されたもので、綿布へは江戸時代に始まった。慶長14年(1609)に有松の竹田庄九郎が綿布を絞って藍染めを行い、手綱絞を初めて作り全国に普及させた。

シャークスキン ( sharksikin )

異色の糸を交互に配列して2/2綾織とし、サメの皮のような外観を表した梳毛織物。織物組織の上では綾線は右上がりとなるが、色糸模様は左上がりとなる。

ジャージー ( jersey )

なぜか日本ではジャージと発音され、体操服の代名詞にもなっているが、元来ニット生地の名称で、比較的細番手の糸を用いた厚手のものを言う。織物では撚方向の異なった梳毛単糸を1本おきに使用し、軽く縮絨してメリヤスの風合を出したもの。語源はイギリス海峡のフランスに近いところにジャージー島と言う島があり、ここでとった羊毛から作ったニットが光沢があって美しいのでその名がつけられたと言う説と、イギリスにすばらしく容姿の美しいジャージー・リリー ( Jersey Lily )という夫人服飾家があり、この名前をとったとも言われている。

ジャカード織 ( Jacquard Cloth )

紋織物。ジャカードとはこの開口装置を発明したフランス人の名前で、装置のこともジャカードという。

シャギー ( shaggy )

シャギーとは「毛深い、毛むくじゃらの」という意味で、紡毛織物のもじゃもじゃしにけば立った厚地の服地。

昔は「島」と書いた。室町時代の末期にスペインやポルトガル船がわが国に来航した時、積み込んできた各地の産物の中に縞木綿があったが、当時これらの木綿は海外の島から持ってきていた。そのために島木綿。そのころまでは庶民の衣服は無地であったが、この時代から縞が用いられるようになった。単純なタテ縞、ヨコ縞や格子縞のほか、太さの組み合わせで種々のものがある。

朱子(しゅす、繻子)

中国では、「紵子 ちょし」と言っていたらしいが、日本でなまったらしい。繻子(薄い絹織物)、さらに音を当て字した「朱子」と書くようになった。古くは「八糸、八糸緞」と書いて、「しゅす」と読ませていた。これは今日で言う「八枚朱子」だったかららしい。

ジョーゼット・クレープ ( georgette crape )

ジョーゼットの名は、フランスの婦人服商(婦人服デザイナーとも言われる)ジョーゼット婦人(Mdm. Georgett de la plante) の名をとってつけられたもので、リヨン商業会議所年報1914年版に初めてこの名が紹介されている。わが国では大正の頃から生産されており、経緯にSZ強撚糸を2本ずつ交互に使用した比較的密度の粗い平織物(JIS)である。

杉綾(herring bone)

ヘリン・ボーンとも言う。杉綾は組織の名前でもある。ヘリンボーンとは「ニシンの骨」という意味で、西洋ではこの織目がニシンの骨に見えるらしい。日本では杉の形に似ていると考えたらしい。毛織物で多く用いられ、その他の素材では少ない。

スポーテックス (sportex )

やや細い糸を使用して、やや軽く緻密に織られたツイード調のもの。ロンドンの毛織物商が、スポーツ用のテクスタイル (textile =布地)という意味から名付けた商標から転化したと言われている。

ゼファー (zepher)

毛織物のゼファーは強撚の細番手糸を使用した斜子織。zephyr という言葉は「そよ風」という意味なので、夏生地を強調するために名付けられたのだろう。

タータン・チェック (tartan check)

タータンは、スコットランド王家の領土とその士族達の家柄を表すもので、家紋に相当する。当時はタータンのスカートをはいて、戦功があると線を加えていったので、現在の柄数は171種におよぶ。しかし、更に古くまで遡ると、13世紀頃にスペインで織られていたチリタナ (tiritana) という小さな、格子柄の織物がその源であるとされ、これがスコットランドに渡って発展したらしい。ちなみにタータン・チェックは和製英語。英語では単にタータンと呼ぶ。

タイ・シルク (Thailand Silk)

タイで作られる絹織物。経糸に極細の絹糸、緯糸に甘撚の紬(つむぎ)糸を使用した平織物。明るいトルコ・ブルーや黄褐色、金糸・銀糸を使い東洋的な色彩に特徴がある。

タオル (towerl cloth)

1811年にフランスで創られた。その頃は絹製品だったが、1848年にイギリスで初めて綿製品が織られたと言われる。日本では明治5年にイギリスからタオル織物が輸入され、明治13年頃に井上コマが、輸入タオルを参考にし、細い竹を折り込んでワナを作る「竹織タオル」を考案。その後タオルを織る専門の機械が作られた。タオルは英語の towel で、これはスペイン語の toalla (浴布)の意味。

竹縞

竹が並んでいるような縞。棒状の縞に竹の節のようなものがあるのが特徴。

チェビオット・ツイード (Cheviot Tweed)

単にチェビオットとも言う。スコットランドの南部からイングランドの境界にのびている、チェビオット連山に住む羊の毛を原料としているためにこの名前がある。

千鳥格子

柄の調子が千鳥が飛んでいる姿に似ているからだと言われている。ハウンド・トゥース・チェック (hound's tooth check =猟犬の歯の格子模様)、スター・チェック (star check) とも呼ばれる。一見、ガンクラブ・チェックと似ているため同一視される事が多いが、一つ一つの柄にギザギザがあり、大柄である。

チノ (chino)

元来、軍服に使われる丈夫な綾織物で、綿のコーマ双糸を使用したカーキ色の織物。第一次世界大戦の時に、フィリピン駐留の米軍が、軍服用に中国(スペイン語でchino)から購入したところから言われるようになった。しかし中国産ではなく、イギリスが綿織物をインドや中国に大量に輸出していたものである。ちなみに Chino は中国最初の統一国家「秦 ch'in」から来ている。英語のChina もここから。日本で中国の事を「支那」と呼ぶのも「秦」の音の転化。

縮緬 (チリメン、crape)

縮緬は天正年間(1590年頃安土桃山時代)に、明の織工が堺で明風の縮緬製造法を、土地の人に伝え、これが京都の西陣に伝わり、更に峰山・岐阜・桐生など各地に広まる。元来は絹織物である。

チンチラ(玉ラシャ、 chinchilla)

毛玉が布面いっぱいにできたような感じの織物。英名 chinchila チンチラは、初めて作られたスペインの町の名前に由来すると言う説と、南アメリカのリスの名前から取ったと言う説がある。

ツイード (tweed)

イングランドとスコットランドの境を流れるツイード川の沿岸地方が原産地。ウールの手紡糸を使用した、2/2綾織物 (tweel) 。この布地は綾織物なので、英名で twill であるが、たまたまこれを誤って tweed と書いたのが、この名前の起こりと言われている。なお、ツイード川の原義はケルト語の「強い流れ」。

デニム (denim)

フランスのニームで創られ、ニームのサージ (serge de Nimes)と呼ばれていた。serge セージは絹のこと。後に綾組織の絹・毛・綿織物を言うようになった。特に経糸は藍染め糸、緯糸にさらし糸を使用したものをさすようになる。これが一般化して、デニムと言うようになった。serge de Nimes サージ・デ・ニームのサージが消えて、デ・ニーム (de Nimes) ということらしい。イギリスで厚地、綿糸20/1以下(経糸は濃紺か茶、緯糸は漂泊)を使用した綿布として生産され、船員や工員が用いた。丈夫なため、古来アメリカ西部の開拓者に好んで用いられた労働作業服地である

天竺木綿(天竺、sheeting, grey sheeting)

経緯に1/20級の生地の綿糸を使用した、経緯同密度の平織物。昔、日本ではインドの事を天竺と呼んだ。この織物はインドから渡来したのでこういわれている。T-Cloth とも呼ばれるが、これはイギリスが最初に輸出した時、Good-T のマークをつけて出荷したからだという。

ドスキン(doeskin)

柔軟で光沢のある、目の結んだ5枚朱子の紡毛織物。イングランド西部で創製される。見た目も手触りも雌鹿(doe)に似ているから、雌鹿の肌ということで、doe+skin とのこと。

トブラルコ( tobralco )

初めイギリスの Tootal Broadhurst Lee Co. の創製したもので、その頭文字を集めて tobralco の商標で売り出したもの。ヘヤコード (hair coad) と同義語で、経糸または経緯糸を数本おきに、2〜4本引きそろえて筋を現した平織物。

トリコチン (tricotine)

ギャバジンに似た畝の高い織物で、トリコットすなわちメリヤス風の地合いを持つ事からこの名前がある。

トリコ織 (tricot weave)

経二重織、または緯二重織で、経か緯方向に畝を現した伸縮性のある織物。トリコット生地に似ている事からこの名前がある。

トロピカル (tropical suiting)

鳥ぴ軽は暑い所でも着用できると言う織物と言う意味で、tropic (熱帯) から名付けられた。主として夏期用の薄地梳毛織物で、俗に「トロ」と呼ばれている。

トロピカル・パターン (tropical pattern)

オセアニア諸島、ハワイ諸島等の南国の植物、花、風景、風俗を、大胆に取り入れたプリント柄の総称。元来はハワイのムームーのようなリゾート・ウェアの柄をさしていたが、現在では一般カジュアル。ウェアのプリントにまで使われる様になった。

バックスキン (back skin)

裏側(スウェード)の事で、ベッチンまたは緯朱子の生地を使用し、なめし革のような外観に仕上げた織物。

バティック (batik)

ジャワ更紗(さらさ)とも言う。インドネシア諸島を中心として作られる。ろうけつ染めによる更紗柄のこと。バティックはジャワ語でろうけつ染、またはその布の意味。

羽二重 (はぶたえ, habutae)

羽振妙の意味であるといわれる。
上古に衣服を白羽と言い、妙は和妙(にきたえ)、明妙(あかるたえ)、白妙などの妙。これをあわせて白羽妙となり、更に転じて羽二重というようになったと伝えられる。また製織するときに、経糸の用い方が二重であるからこの名前になったとする説もある。 さらに筬羽の一目に2本の経糸を通して織ることから名付けられたとも言われる。仁徳天皇の頃には既に生産され、安土桃山時代には羽二重の名称が用いられている。

ハリス・ツィード (Harris tweed)

スコットランドの北西岸にならんでいる、ヘブライズ諸島の農民によって作られた手紡、毛織のソフトなツィード。最高級品。

パンピース (palm beach)

トロピカルに似た、もともとはモヘヤ糸を使用した夏服地。別名はパーム・ビーチとも言う。米国のグッドオールサンフォード社の登録商標で、フロリダ半島の海水浴場のある地方で作られたものである。パーム・ビーチとはシュロ(棕櫚)の海浜で、夏を連想させる名称。

ビーバー (beaver cloth)

ドスキンよりも密度が高く、肉厚な紡毛織物。イングランド地方で創製され、外観や手触りがビーバー(海狸)の皮に似ているので名付けられた。

ビエラ (Biera)

もともとはイギリスのウィリアム・ホーリン(Willia, Hollins & Co)という会社の商標名ヴァイエラ(Viella)から来た名称。綿と毛の混紡糸を使用する。綿が50〜80%を占め、20s〜30s程度の番手で、2/2斜紋織として、軽く起毛した織物。

ビキューナ(vicuna)

南米ペルーの高山にすむビキューナという動物の毛を使用したソフトな触感の紡毛織物。

ピッケ(pique)

フランス語で刺子縫されたというような意味で、布面の特徴によって名付けられた。横、斜め、波形などの畝があるのもので、縦方向に畝のあるベッドフォードコートもピッケと呼称することが多い。

一越縮緬(ひとこしちりめん)

右撚、左撚の強撚を緯糸に一本ずつ交互に打ち込んだ縮緬で、細かいシボが得られる。「一越」としは緯糸1本のことをいう。2本ずつ打ち込んだものは「二越縮緬(ふたこしちりめん)」と呼ぶ。

ビロード、天鵞絨、ベルベット(velvet)

ポルトガル語のvelludoおよびスペイン語のvelldeから転化したものである。室町時代に我が国に伝来した当時は非常に珍重された。「天鵞」とは「白鳥」のことで、当時いかに驚きの目で見られていたかが伺える。

フェルト(felt)

濾過するというアングロサクソン語からきているらしい。昔、フランスの僧正が遠方に行くのに足を痛めないようにと靴底に羊の毛をしいて出かけたところ、暖かみと湿気があるところに体重がかかってできたことが製造のもとになったと伝えられている。しかし、羊飼いはずっと古くから製造法を心得ていたようだ。

ブランケット、毛布(blanket)

毛布は1340年にイギリスのプリンストンでトーマスブランケット(Thomas Blanket)という人物が、保温と寝具用の布地として作ったのでこの名がある。

フランネル、フラノ(flannel)

軽くて柔らかい紡毛織物。名称はイギリスのウェールズ地方の言葉で、gwlanen(ウールのようなという意味)から来たといわれている。

フリーズ(frieze)

厚手で表面が粗硬な不揃いの縮れた不毛で覆われた紡毛織物。1399年にオランダのフリーズランドで初めて作られたのでこの名がある。現在アイルランドで作られている。

プリンス・オブ・ウェールズ(prince of Wales)

大柄のグレン・チェックのこと。かつてイギリスのウィンザー公が、プリンス・オブ・ウェールズ時代に、この柄の服を好んで着用したことから名付けられたといわれている。

フレスコ(fresco)

ポーラに似たもので、イギリスのガニヤ商会の登録商標。アフリカの西、象牙海岸にある港町の名を取ったもの。イギリスではポーラのことをフレスコと呼ぶことが多い。我が国では、ポーラが平織りであるのに対し、変化組織を持つものとか、三子糸の強撚糸使いのものを特にフレスコといっている。

ヘアー・クロス(hair cloth)

毛芯ともいう。経糸に雑種羊毛、緯糸にヤギの毛など粗硬なヘアー糸を使用した堅い薄地の織物で、洋服の芯地に使用する。ホースヘアー・クロス、馬巣織(ばすおり)もこの一種。

ヘアー・コード(hair cord)

トラブルコ参照

ヘアー・ライン(hair line)

経緯糸とも一本ずつ交互に異色の糸を配した織物。織物名称であるとともに、縞柄の名称でもある。糸一本ずつの縞で、非常に細かい。ヘアーは髪の毛のように細いということから来ている。

ベージュ(beige)

フランス語で自然のままにという意味から、染めないままの織物のこと。英語でグレー(gray)、すなわち生機(きばた)という意味。染めていない糸、特に羊毛糸をベイジュ・ヤーンともいう。

別珍(べっちん、velveteen)

1725年にフランスのリオンで創製され、1756年頃からイギリスのマンチェスターで盛んに生産された。我が国には明治の初期にはじめに輸入され、明治の末頃から生産されるようになった。ベッチンの名称は、ベルベティーン(velveteen)の語呂からつけられたもので、大正の初め松井某という人が別珍足袋の登録商標に用いたのが別珍の文字であったが、これが織物の名称になった。