ジャケットと同寸のコート
今回の挑戦
今年の秋冬用にと、地味ではありますが、少し面白いものを考えてみました。寸法が「ジャケットと同じピーコート」です。
通常、コートはジャケット寸法+4cmで作ります。下にジャケットを着けるためですね。当然、コートをジャケット寸法と同じで作れば、下にジャケットを着られません。つまり小さすぎるということになります。しかし今回「それにも関わらず着られてしまう」ピーコートを作ってみました。
船乗り御用達の pea coat
まずはピーコートにつきまして。定番コートの一つに pea coat (ピー コート) というものがあります。もともと船乗り御用達のコートで、船乗りならではの工夫があるコートです。船乗り御用達のコートが pea (豆) コートとは極めて変ですが、元は英語ではなくオランダ語であるようです。オランダ語の pijjakker (pij=荒布のコート, jakker=ジャケット)が英語に転訛したものであるとのことです。特徴は
- アルスター/リーファー・カラー
- ダブル/両前
両前とは、前身頃が右前でも左前でも問題ない構造のことを言います。pea coat の場合、船の上で風向きが変わったとき、風が入り込むのを防ぐため、左右の合わせを入れ替える必要から、このような構造になっています。 - ハンドウォーム
冷える船の上で手を温めるための小さなポケットです。
ほぼ同じものにリーファー・コートと呼ばれるものもありますが、私自身は不勉強で今一つ違いが分かりません。海軍の士官候補生なども身に付けたとされるコートですが、個人的にはリーファー・コートの中にピー・コートが含まれているような気がします。
右の写真が今回試作したピー・コートです。どうでも良いことなのですが、このコートに件のボルサリーノを被せたところ、何となく、何となくではありますが、『銀河鉄道999』の車掌さんを連想してしまいました。
コートを細く作る
A
B
C
Aは下にタートル・ネックのセーターを着ています。Bはジャケット、Cはシャツのみです。写真ですと今一つ分かりにくいのですが、それぞれ殆ど違和感がなく着けられていると思います。でも、実際の採寸はジャケットと同じです。地味な試しではありますが、少し面白くありません?。
どんな工夫をしましたかはナイショです。仕立屋やテーラーでしたら、直ぐに分かってしまうものだと思うのですが、今までこの工夫をしたコートを見たことがありませんので、以外に盲点かもしれません。実際にご覧頂いて、不思議に思って頂けましたらとても嬉しく思います。
また、ピー・コートがカジュアルにあうのは当然として、今回はスーツ着用を前提に作ってみました。580/590gの目付にも関わらず、意外に穏やかで上品な着用が出来ると思います。総手縫、総ステッチです。
裏地もスーツ着用を前提に上品なものを用いました。また、前述の通り目付けが580/590gですから、極めて強靭です。10年位、当然のように着用可能です。この生地の優れているところは、それにも関わらず柔らかい点にあるといえるでしょうか。タウン・ウェアとしても、カジュアルやビジネス・シーンでも、様々な場所で使えるものになったと思います。
用いました生地は、たまたま値打ちに入りました Zegna/69% Lama, 31% Wool です。高価であるのが難ですが、旧生地でしたので、新柄生地価格 = 仕立て上がり価格で可能です。
悔しいことにこれは良い生地です。この生地が安価で値打ちに入るということで、このコートの制作を思いついた程です。このコートのためだけに何着分か仕入れてしまいました。
・・・ただ、問題が1点あります。試作品を作り、飾っておきましたところ、想像以上に好評で、このページでご紹介する前に、取り置きの「黒」がいきなり無くなってしまいました。
とても嬉しいのですが、もしかすると派手に読み間違えたかもしれません。