3年目の麻ジャケット

この3−4年作っておりますが




麻はかなり好きな素材な上に、CoolBizもあって、ここ3-4年は何かしら麻のものを試作しています。昔々の縫製方法を探して見たり、デザインで遊んでみたりしていたのですけれど、今年は、久方ぶりに面白いものが出来たように思います。口の悪い家人もしぶしぶながら褒めてくれましたので、ちょっとは自信を持っても良さそうな気がします。使用した生地は Dormeuil Natural, Duble Face です。

見た目は「植物感ある」麻の雰囲気を持ちながら、シルエットにできる限りボリュームを持たせました。熱塑性のない麻生地で、かなり限界までボリュームが出ているように思います。

正面から写真で見れば、普通のジャケットのようにも見えますが、「普通のジャケット・シルエットに見える麻ジャケット」というのもなかなか奇妙で良い感じです。ただ、今回は折角の麻ジャケットですから、あちこち遊んでみました。

まず、オール・ハンド・ステッチです。写真の全体図では分かりにくいのですが、歪で少し太めのステッチ糸を効かせています。また、この生地は Double Face ですので、表と裏で違う色を持つのですが、裏側にしている鮮やかな青に合わせて、両袖第三ボタンの切羽、更にボタンの縁の色まで合わせてみました。

また、袖裏を外しましたので、右の様に袖を捲れます。捲ってしまうと、ベンツから見える背裏、捲った袖裏、第三袖ボタンが同色で一列に揃います。揃って何か意味があるかというと、…見事に何もありません。

更に、襟のカラークロスも、Double Face の裏が見えるようにしました。このジャケットで襟を立てて着用することが果たしてあるのか?、恐らくありません。少なくとも私はしません。だったらどうしてそんなことをしたのか…、そんなこと聞いてはいけません。

背抜きの裏に柄裏地を使いました。ただ夏服仕立てでも、極めて裏を減らしています。非常に派手で使いにくい裏地ですが、Double Face の裏側の鮮やかな青と良くあったように思います。また、裏隠しはお台場です。薄い生地の場合、お台場は当たりが出やすく、ボリュームが歪になりがちです。構造上では最善手ではありませんが、今回は麻素材ですし、柄裏地ですから大変面白くなります。

正面は獣毛素材のようなボリュームあるシルエット、但し素材質感は麻そのもの。シルエットはスーツスタイルですが、田舎臭く、歪つで太いハンドステッチ。一見、地味な表地ですが、捲ったりして裏側が見えると極端に「青」です。違和感のある矛盾した取り合わせを色々組んでみたところ、とても面白いものが出来たように思います。

2007.03.01