同じストライプでも別のストライプ

同じ服でも同じように見えない典型例

気がつけば松も取れまして、寒中となりました。昨年の夏は不必要なまでに夏らしく、今冬は随分と厳しい冬になりまして、何とも極端な陽気です。そのせいか、シーズン間際まで傾向がはっきりせず、シーズンに入るなり明確になる傾向があったような気がします。

一昨年、昨年とストライプ柄が随分と目立つようになりまして、TVでも頻繁に見かけるようになりました。かなりはっきりしたものが好まれているように思えます。

D.e.N.A. TV CM

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服はまるで普遍的ではなく、着用者Aさんには似合っても、Bさんには似合わないということが頻繁に置きます。色々と要素はあるのですが、今回はストライプで起きる簡単な勘違いにつきまして。

ストライプは至って単純な柄です。縦か横に線が入っていればストライプ、要素は基本的に1.地の色、2.線の色、3.線の巾、4.線の間隔です。余りに単純なだけに、意外に気がつかない錯覚のようなものがおきます。今回は4.線の間隔についてになります。

線の太さ,線の間隔が等しいとしても見え方は違う

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右AとBは「同じストライプでしょうか」。同じです。線種,太さ,間隔が同じで、ただ地の面積だけが1:4です。しかし線の間隔は「どちらかが広い」ような気がしないでしょうか。

ABは単なる四角なのでピンと来にくいかもしれません。ジャケットA',B'ではどうでしょうか。全く同じストライプです。この場合、B'の方が間隔は広い気がしないでしょうか。

「物理的な線の間隔」と「線の間隔の印象」は全く別の話です。とても単純なことで、ストライプの印象はその面積に占めるラインの面積で決まります。A'では右腕に3本ラインが入りますが、B'では2本しか入りません。つまり物理的な間隔は同じでも、印象としての間隔は別ということです。

これは「大きい/小さい」が「遠い/近い」でもあるためかもしれません。A'B'の大きさの違いが「距離による」ものだったとします。そうすると同じ距離にしたとき(A''B'')には、A'の方が間隔は狭いことになります。極めて単純で無意識の時ほど間違えませんが、意識的になればなるほど勘違いしやすくなります。

このような見え方のクセがあるとします。そうするとこの錯覚のようなもの(?)は、色んな場所で起きていると見当がつくと思います。

雑誌にある既製服

例えば雑誌に掲載される既製服です。ある雑誌で紹介されていたストライプの服があり、実際にその取り扱い店舗に行ってみたら、「複数のサイズに全て同じストライプ生地が使われていた」とします。この場合、印象はどうなるでしょう。

雑誌と同じ印象にはなりません。それどころかサイズ毎に間隔の印象が異なります。雑誌の着用者よりも小柄な方の場合、そのストライプは、雑誌の印象よりも「間隔が広い」印象を受け、逆に大柄な方の場合、そのストライプは雑誌の印象よりも「間隔が狭い」印象になります。つまり、同じサイズが異なるだけで「ストライプの印象も変わる」わけです。

雑誌で外国の方が、Xミル001番のストライプを着けているとします。写真ではその身長は全く分かりません。それが素晴らしく洒落て見えたからと、日本人がX-001番ストライプを使ったとしても、そのまま同じ印象を出せるかは疑問です。大柄でありがちな外国の方です。もしかなり大柄だった場合、体表面の大きさが違うのですから、同じストライプでも意味が変わります。

生地見本

最近では概ね3.2mで生地は流通しています。それに対して生地見本は往復葉書程度、せいぜい15cm〜20cmです。つまり、生地サンプルで見るストライプは「実際よりも広く見えている」可能性があります。これに既製服と同じ問題が加わります。

例えば雑誌に「Xミル001番のストライプ生地のスーツを着用している写真」があり「狭い」と感じたとします。しかし同じX-001の生地を見たとしても、それがサンプルなのか3.2m現物なのかで印象が変わっている可能性があります。また、雑誌の着用者より「大きい/小さい」方は、それでも間隔の印象が変わります。

柄としてはシンプルなストライプですが、突き詰めると中々の難物で、見え方/印象を再現する際には「同じ間隔ではない方が良い」場合があるという訳です。子供服を想像して頂けると良いかもしれません。同じストライプで作っても、子供サイズになると同じ間隔とは思えないほど広い印象になります。

格子柄、チェックでも

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格子柄,チェックは、ストライプを縦横に重ねただけです。そのため事情は全く同じです。格子の大きさでも錯覚のようなものが起きてしまいます。つまりチェックでも全体に占めるチェックの面積で、影響を受けることになります。

これも以前に書きましたけれど、チェックはストライプより大きい/小さい, 遠い/近いに敏感です。

細かい柄は離れると溶ける

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細かいチェックは少し離れるだけで簡単に溶けてしまい、2〜3m離れるだけで無地に見えることもあります。むしろ遠近でとても強く印象が変化する、そういう面白さを狙った柄かもしれません。

生地は少し離れたり、ぼんやり見た方が良いというのは、この柄の大きさの錯覚のようなものを、多面的に見てなるべく消すという意味合いもあったりします。

意外と難物なストライプ

ストライプはとても単純な柄ですから、雑誌で見かけるスタイルの印象を簡単に再現できそうです。しかし、物理的に同じストライプだとしても、体の大きい/小さいだけで印象は簡単にずれる上に、その印象のズレに敏感です。

既製服の雑誌掲載や店頭の写真では抜群に洒落て見えたのに、着けたらなぜかイマイチ、というのは珍しくもありません。これはその既製服+モデルが相互に最適であるためです。既製服には想定する体があり、「掲載洋服+その体格/体型/サイズ」の時に最適になります。つまり「そのモデルへのオーダーメード」が既製服。

ですから、慣れない方は、実際に既製服を購入する、或はオーダーする際、提案されている印象をよく覚えておいて、「同じ印象になる」ことを基準に選んだ方が安全です。「同じモノ」を選ぶことに拘るとスタイルという意味では失敗しやすくなります。

裁断時でもストライプは細々とした注意や留意が必要で、突き詰めると厄介な柄でもあります。簡単に見えて実は難物のストライプでした。

2011.01.10