鮮やかで破天荒な色使い

地中海式色使い

Drapers

鮮やかな青い空、紺碧の海とくれば地中海です。天地が鮮やかなのですから、そこに住む家も鮮やかですし、着るものも鮮やかです。地中海沿岸部は町並みは多色使いで鮮やかです。かの国々では鮮やかな色使いが血に染み付いているような気がしますね。

この、日本人にとっては破天荒とも言える色使いでコーディネートする方が、徐々に増えて来ました。この傾向自体はもう何年も前からぼちぼち出て来ていたのですけれど、最近、富みに目にするようになった気がします。

冬に冬のことをご紹介していては何にもなりませんけれど、紳士服の場合は完全に変化するまで1-2年以上はざらにかかりますので、既にお手持ちのコーディネのご参考にして頂けましたら幸いです。

右の生地はイタリアの生地商である Drapers のコーデュロイです。かなり色が鮮やかです。ゼニア社のコーデュロイはカシミアを織り込んだ豪奢品としての意味合いが強いですが、Drapers はもう少し強靭で実用性の方を高くしています。

色柄は右の通りです。何しろ鮮やかです。ゼニア社の華やかさには負けますが、実用性を考慮している生地にも関わらず、極めて華やかな色柄をしています。

柄の一部を誇張して取り出す

黄色

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色の合わせ方は、通常「柄の一部」を抜き出して使うのが基本です。一見、派手で鮮やかでもこのルールを使っています。例えば右の写真はゼニアのスタイルブックです。

この色の合わせ方、良いですね。通常見ない合わせ方ではありますが、これも「柄の一部」を抜いています。小さい写真をご覧頂くと分かり良いと思いますが、チェックの一番細く目立たない部分の色と合わせている訳です。

グレーなどの“白-灰-黒”には「重さはあっても色がありません」。唯一の色の部分がチェックですが、そのチェックとセーター、ズボンだけで茶系統のグラデーションを作っています。そのために“合う”訳です。シャツやズボンに鮮やかな色を使うのは度胸が要りますが、この色の合わせ方は、実はグラデーションを意図した単色使いです。

紫色

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これは同じスタイルブックからです。更に極端になっています。紫のズボンはかなり目を引きますので、更に度胸がいりますが、嫌みはまるでありません。むしろ、かなり良い印象があります。

この色の合わせ方、写真や一見では分かり難いのですが、同じようにジャケットの色柄の一部を利用しています。小さい写真はジャケットの柄の一部です。このジャケットの柄に使われる僅かな紫、これをパンツに合わせています。

これは多色使いになりますが、それでも、やはりジャケットの柄の一部を取ってバランスを調整しています。

緑色

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最後に、今まで現実にはまず見かけなかった合わせ方でやってみます。ズボンを緑で取ります。これは実際には何処かで見たのですけれど、スタイルブック中ではなかったので、手元の生地でやってみます。

どういう印象になっておりますでしょうか。人が着用している訳ではないために難しいですが、想像為さってみて下さい。鮮やかな緑の扱いはかなり難しいですけれども、これも同様です。グレイは「無色」ですから、ストライプやチェックの色のみが問題になります。

このジャケット生地は、微かな緑単色のチェックです。パンツの色はこれに合わせてあります。ただ、単色使いになりますから、もう少しグラデーションとなる色柄の方が生えるのは勿論です。この写真ではグラデーションがありませんが、まだいきなりの緑単色よりは見られると思います。

このような「ジャケットの少ない部分」の色を取るという方法が、鮮やかな色使いや予想外の色使いの基本となっています。

最初は裏地から

それでも、慣れない内は、このような色使いが難しいのは勿論ですし、度胸も要ります。そこで、裏地で遊ばれては如何でしょうか。随分と裏地で遊ばれる方も増えて来ました。

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Zegna社の裏地です。随分と鮮やかですが、これは「裏」ですから、表で鮮やかな色合いをする程の度胸は要りません。何かの拍子、僅かに見えるだけですから、ちょっとした洒落に悪くありません。

ただ、やはりそれでも、主となる表地柄の一部を取り入れると、色が馴染みやすくなります。この生地の場合、黄色と緑のストライプであるため、緑の裏地も馴染みやすいという訳ですね。

最近流行の鮮やかな色使い、唐突に目立つ色、これはこのような理屈とコツで実現しています。一見、破天荒ですけれど、このルールを知っていれば、もう少し合わせやすくなるかもしれません。ご参考になりましたでしょうか。

流行について少し思うところ

上記は色使いの流行傾向ですが、ファッションにとって流行は一つの大きな楽しみです。ただ、悩ましいものの一つでもあります。例えば国内外の波及する時間差があります。国内でも波及には時間差があります。そういえば極端なものにルーズソックスがありました。東京では全く見なくなりながらも、地方都市では随分長く目にしました。

また、「流行を楽しんでこそ」という方もお見えになれば、「流行は気にせずオーソドックスに」という方もお見えになります。

服を身につける際、流行は知らず知らずの内に自分に影響を及ぼします。具体的な袖丈を1~2cm単位で把握できる方は滅多におりませんが、本来的には体に合った服の袖丈が「短い/長い」ような気がするのは、ほぼ流行の為せる技です。周囲の変化から影響を受けてしまう訳です。

仕立て服はそれほど高いものではありませんが、かといって安いものでもありません。「流行の方」が自分にどう影響を及ぼしているのか、ちょっとだけ意識的になると、流行に乗るにしても気にしないにしても、きっと更に楽しくなるような気がしますね。

2005.11.17