ニッカーボッカーズ

古いズボンとニッカーボッカーズ

ニッカーボッカーズ(knickerbockers)というズボンをご存じでしょうか。ゴルフをされる方には馴染みの深いズボンです。膝下丈で裾を絞った短ズボンです。故ペイン・スチュワートを思い出される方が多いかもしれません。帝王ニクラウスが「ゴルフ界にファッションと熱狂を持ち込んだ功労者」と称えるプロゴルファーですね。

なぜニッカーボッカーズがゴルフと結びつきが強いのか、今ひとつ分かりません。ただ「普通のズボンでは予備のボールをポケットに開けた穴から都合の良い場所に落とすことができる。ニッカーボッカーズでは裾が絞られているから、そのようなインチキはできない。ニッカーボッカーズはルールとマナーを遵奉する意思をもった服」という言葉を聞いたことがあります。

さて、このニッカーボッカーズ、非常に根強い人気があるものの、流量が少ないためか既製服の場合、まず選択肢はありません。その上に、スポーツ用途にしては高価です。それでもスポーツ用の短ズボン、しかもカジュアルなのですから、思い切り趣味に合わせたものが欲しくなります。

そこで、もし扱いにお困りの古いズボン（特に2タック）がございましたら、作り替えはいかがでしょう。なるべく太いものの方が見栄えがします。当店では5,880円(08/04/30現在)で承っております。修理扱いですので、どうぞお気軽にメールなどでご連絡下さいませ。

お気に入りのズボンを再利用できますし、もしそれがスーツのズボンでしたら、ジャケットをつぶして、ニッカーボッカーズと共布のキャスケット帽などもお作りできますよ。

名前の由来はオランダ人入植者

ニッカーボッカーズはちょっと面白い来歴を持っています。1809年に米国の小説家ワシントン・アービングが『ニューヨーク史』という本を書いています。ニューヨークがオランダ系移民によって構築されたことに由来するというのが主題のようです。そのため、この本の挿絵を描いた英国人クルックシャンクはオランダ風俗に則った挿絵を描きます。

ニューヨーク、マンハッタン島の南部にオランダ人が小さな入植地を作ったのが、ニューヨークの最初の一歩。そこで、オランダ人が身につけていたのが、膝丈のゆったりした短ズボンです。これはもともと、単に“ブリーチズ(半ズボン)”と呼ばれていた様なのですが、アーヴィングが“ニッカーボッカー”というペンネームで『ニューヨーク史』を書いてその文化を紹介したため、“ブリーチズ”がニッカーボッカーズという名前で知られるようになったとのことらしいです。

ちなみに、knickerbockerと単数になると、今でもオランダ系移民を表します。アメリカNBAバスケットボール・チームにNewYork Knicks というのがありますけれども、これも Knickerbokcer からです。今ではニューヨーク在住者の総称ともいえるようになってしまっているようですね。

そういえば、ティム・バートン監督の映画にスリーピー・ホローという映画がありました。そのスリーピー・ホローの伝説を作り上げたのもアーヴィングです。アメリカには伝説が何もありませんでしたから、アーヴィングはヨーロッパから移植します。その結果として誕生したのがスリーピー・ホローの伝説。あの映画の舞台がニューヨーク近郊のオランダ人入植者の村だというのは、正しいと言うことになりますね。

なんとも本の威力というのは大きなものです。

ノーフォーク・ジャケットと組み合わせ

ニッカーボッカーズ、略してニッカーズはスポーツ用途です。ニッカーズといえばゴルフウェアと同時に野球との結びつきも強いものがあります。もともとニッカーズがアメリカ由来なのですから、当然野球とも結びつきが強いということでしょう。つい先日、イチローが年間260ヒットを打ち、シスラーの記録を塗り替えました。このシスラーが野球をしていた当時の写真を見ると、やっぱりニッカーズです。

ニッカーズはズボンですが、スポーツ用途のジャケットというものも勿論あります。かつて野球の主審が身につけているのをよく見ました。それが“ノーフォーク・ジャケット”です。

ノーフォーク・ジャケット、もともとは狩猟用です。動きやすいように、脇の下がジャバラになっているものも多く、野球のアンパイアが、「アウトォォォッ！」と叫ぶあの仕草、片手を高々と上げる仕草がしやすいようになっていたりします。そのほか、やはり動きやすいように縦にボックス・プリーツを入れ， ウェストのまわりにボタンどめのベルトがついています。 素材はツイードやコーデュロイが多いですね。狩猟用途でもあったので、堅くて重いのですが、それもまた良しというものです。

このノーフォーク・ジャケット＋ニッカーボッカーズという姿が、昔はゴルフ場や野球場にあふれていたわけです。…なんというか、こう、ゴルフ場をこのスタイルで埋め尽くしたいという野望が沸いてきます。