カジュアルの基本的な考え方
アメリカン・カジュアル
ジーンズやTシャツなどに代表されるアメリカン・カジュアルは、そのほとんどが工場で大量生産されます。ですから、体を服に合わせることが非常に重要になります。逆にいえば、着こなしなどほとんど関係なく、ただ体が服に合っているかどうかが、似合う似合わないを決定的に決めてしまいます。つまり体形が合わなければ、困ったことに「何をやっても全く似合いません」。
たとえばジーンズ。ジーンズは非常に股上が浅いですから、お尻が大きく引き締まっており、なおかつお腹も締まっていなければなりません。これが条件ですから、これに合わなければ必然的に似合いません。もしこの体形でなければ、体をジーンズに合わせなければなりません。またTシャツですが、これは体のラインをほとんど何も隠しません。これを格好良く着るためには、逆三角形▼の体形で、胸板も厚くなければなりません。ですから、一定年齢を超えると、ほぼ必然的に似合いにくくなってきます。
アメリカン・カジュアルというのは、言ってしまえば作業着です。なんのディティールもなく、体の線を何にも修正しなければ、隠しもしません。似合う人には徹底的に似あいますが、似合わなければてんで似合いません。もし下手に着れば、オジサンっぽくなったり、野暮ったくなったりします。では、どうすれば良いでしょう。その答えは、体を鍛えるか、きっぱりアメリカン・カジュアルを捨てるしかありません。
ところで、アメリカン・カジュアルを全面的に押し出した有名なブランド(?)にユニクロがあります。かのユニクロの創始者、柳井氏のお父様はテーラーだそうです。意外に知られていませんが、そのユニクロの販売コンセプトは「全ての家の洋服ダンスに一着はユニクロの商品が入るようにしたい、しかし洋服ダンスの中の全てにユニクロ商品が入って欲しくはない」というものです。この言わんとするところは明快です。「カジュアルは怠惰を意味しない」ということです。
最近、日曜日に、ある都市へゆきました。すると、右を向いても左を向いても、老いも若きも、男性も女性も限らずに、Tシャツにジーンズ姿がやけに目に付きます。日曜日ですから、まさしくカジュアルを着る日でしょう。しかし、そんなにアメリカン・カジュアルが似合う体形の人は多くありません。なのに多いということは、えーと、言い難いのですが、つまり、これは、言い切ってしまえば・・・。
・・・怠惰の象徴といえるでしょう(ついに言ってしまいました)。いいです、私は一介のテーラーですから。
恰幅の良い体形の場合
恰幅が良い体形の場合は、どうしてアメリカン・カジュアルの様な服が似合わないんでしょうか。これを知れば、自分で服を選ぶときにも考え方の大きな目安になります。
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この図では、ディティールをはっきりさせるために、黒い襟状のものを使いましたが、実際には黒でなくとも構いません。
いい加減な図で申し訳ありませんが、人の上半身だと思って下さい。この場合、1がディティールなし、2が上部に少しだけディティール、3が腹部までに至るディティールがあるとします。全部同じ大きさですが、見え方が違いませんか?。体の大きさについては 1 > 2 > 3 の順に大きく見えます。そして、腹部から腰部への膨らみについては、2がもっとも目立ち、3がもっとも目立たないのではないでしょうか。
恰幅の良い体形の場合、2を選ぶのは、あまり良くないでしょう。この体形でポロシャツなどを着た場合に特に顕著です。いかにもオジサンと呼ばれる着こなしになりやすいです。同様に、最近はやりのクラシコやスティック・スーツを着た場合にも、あまり似合わないということになりますね。
つまり、恰幅の良い体形の場合、ディティールが重要になるということです。ディティールがあると、その周辺に目が行きますから、そのディティールとのバランスによって体形の見え方が変わってきます。アメリカン・カジュアルには殆どディティールがありませんから、その体形はストレートに人に見えてしまいます。それはそれで良いのかもしれませんが、一歩間違えれば、非常に損をすることにもなるわけです。
どうしてもアメリカン・カジュアルなら
どうしても、恰幅がいい人で、なおかつアメリカン・カジュアルを着たい場合、前にきっぱり捨てるべきと書きましたが、方法がないわけでもありません。しかし、一つ間違えれば、ひどくみすぼらしい印象を人に与えてしまいますから注意が必要です。
まず、若い方がしばしばするように、ジーンズの外にTシャツを出したい時の注意です。外へ出したい場合は、Tシャツは必ず1〜2サイズは大きいものにすること。そして、なるべく派手な「柄」があるものにして、単色のものは避けるようにします。そして、二三回着たら捨てるようにする。この三つは最低限守って下さい。
大きめのサイズを選ぶ理由は、体のラインを隠すためです。派手な柄は体形を隠すディティールの役割を果たします。しかし、これは一歩間違えると、非常にだらしのない印象を人に与えます。また、Tシャツを外に出すと、やはりだらしない印象を人に与えますし、加えて30歳半ばを越えて、なお恰幅が良い方の場合、着古したTシャツを着ると大変に見窄らしく見えます。ですから、少なくとも絶対に着古さないことが重要です。
少し面倒くさく、柄の合わせ方も難しいですが、これを守ると逆にすごくカッコイイですよ。アメリカでは、体格の良い太った体形の人が、アメリカン・カジュアルを着こなすのは、相当にイイとされています。若者に人気のHIP-HOPという音楽ジャンルでは、これが顕著です。KONISHIKI(小錦)さんが、アメリカン・カジュアルを着こなしてHIP-HOPに乗せて踊る姿は、なかなかイイでしょう?
次に、Tシャツをジーンズの外に出すのは、どうしてもだらしがない感じがして、抵抗があるという方の場合です。この場合、少なくともベルト幅を太いものにして下さい。4cm前後位が目安で、あまり太すぎても駄目です。ですが、これで、大丈夫です。
どうでしょう、参考になりましたでしょうか。