ノーフォーク(Norfolk)で遊んでみる

かなり装飾過剰ではある

ノーフォーク (Norfolk)

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ノーフォークは19世紀末頃に登場する狩猟,スポーツジャケットです。名前はイギリス東部の州名から、或はノーフォーク公から来ていると言われていますが、良くわかっていません。典型的なカントリーで、勿論冬服です。相変わらず夏に夏服の、冬に冬服のご紹介、服飾業界の理屈とは無縁な更新です。

典型例は図の通り、かなり装飾が多いのが特徴です。これは補強や利便性のためです。プリーツ(ひだ)が脇や背中、ポケットなどに走っています。これは物を入れたり、大きな動作をするときの余裕を確保するためのもので、非常に実用的です。

生地は厚手でざっくりしたホームスパン系統のウール地、例えばドニゴール・ツィードなどをよく使います。ズボンは通例ニッカーボッカーを合わせます。

過剰であるなら淡白に

個人的には非常に好きなジャケットなのですが、実用的なだけに装飾過剰な感が否めません。ゴルフや、軽いハイキングとしては理想的ですが、タウンウェアとしては鬱陶しい感があるため、幅広くは使いにくい難があります。

...ならば変えてしまうのがオーダーというものです。ということで、シャレもののお客様と相談の上、頭を絞って作ってしまいました。

T様の着用写真 ノーフォーク スーツ

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Bascket Button

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表側ベルトは廃止、上の図にあるような肩からのベルト状の装飾も廃止です。他方、ポケットは通常の蓋付きでは地味になりますので、アウトポケット+フラップ付きのチェンジポケットです。この段階で既に構造上もデザイン上もかなり独自のものになってしまいました。

生地はHolland Sherry (ホーランド・シェリー) の杉彩、ドニゴールです。ノーフォークの印象が欲しいですので、エルボーパッチなど、アクセサリを黒の本革で統一、ボタンも本皮のバスケット釦を使っています。

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他方、背中側はノーフォークの印象を強く出したものになっています。縫い付けの腰ベルトに、背中央には本来のボックスプリーツを入れましたので、かなり腕が上がり、カジュアルとして活動的に動けます。

ラフにジーンズと合わせても、共布で作ったパンツと合わせてスーツとしても、替えベストと合わせても、それぞれ違った雰囲気が楽しめます。靴もウィング・チップだろうと、スポーティなものでも大丈夫!。

野外のコンサートや、軽い散策、風雪にも耐え、タウンウェアとしても使えるという非常に広範な着用が楽しんで頂けると思います。ディティールに皮の色が取れるので小物類 (例えば写真では手袋) などが、特に革製品と非常に合わせ易くなります。

...厳密には、これがノーフォークと言えるかどうか、ちょっと怪しくなっておりますものの、職人共々、他にはない面白いものが出来上がったと喜んでいます。多分、他にはありません。ある訳ありません。店主は変わり者です。きっとT様も変わり者ですが、シャレているので問題ありません。

お納めまでの暫くの間、店に飾っておきました所、非常に好評を頂きまして、立て続けに数着のご注文を頂きました。実は私も欲しいのです。そして、幸いなことに、手元にはかなり出物なScabalのツィードが5mあります。

...5m。作るか作るまいか、仕立屋にとっては非常に悩みどころな尺です。なぜ悩みどころなのか、分かる方はきっと同業者に違いありません。...悩ましい。

お写真の掲載を快く了解して頂き、またこのお洋服をとても気に入って頂きましたT様に心より御礼申し上げます。

2008 12/30