大臣とスーツ

政治の季節

参院選も佳境に入って参りましたようですが、新潟の地震もあり流石に名前の連呼も例年より少ないように感じます。新潟の皆様は何ともお気の毒なことで、一刻も早い復興を祈念致しております。

新聞やら何やらでは安倍首相率いる自民党の劣勢が伝えられ、年金問題でも随分と首相は叩かれているようです。ただ、年金問題は首相就任前から根のある問題のように思えるところ、首相というのは兎に角叩かれるのが仕事のようにも思えます。

ただ実際のところ、私の周囲では安倍首相より麻生大臣の方によほど人気がありますようで、次期首相にと待望する方が多くお見えになります。選挙の季節でもありますし、少しばかり総理のお洋服について考えてみました(政治のことは領分の外というものです)。

安倍総理

以下、写真は全て総理官邸/外務省からになります。安倍総理の写真を片っ端から見ましたところ、かなり顕著な特徴があるようです。しかも困ったことにかなり「悪い」特徴が顕著です。

A. バローゾ欧州委員長と安倍総理, 平成19年1月11日

B. サルコジ国務大臣兼内務大臣と安倍総理, 平成19年1月12日

C. ズン・ベトナム首相と安倍総理, 平成17年11月17日

体形との不一致

まず、全く体に合っていません。典型的な既製服です。安倍総理は恰幅が良い体形(少しお腹が出ている)であるためか、お腹でサイズを合わせています。その結果、「胸と肩幅」が余っており、江戸時代の裃(かみしも)のように見えます。つまり大きすぎる服です。

政治家の方は、貫録を出すために大きい服を好むものですが、「大きい服」だからといって貫録が出るものでもありません。むしろ安っぽい印象、田舎臭い印象を生みがちです。

右のバローゾ委員長は細身に見えますが、立派な押し出しをしています。これは立体的な胸元/裾口のドレープ(丸みのあるボリューム)が効いているためです。

服としての出来

バローゾ委員長のお洋服は良いものです。最近の流行傾向である細目のラペル、ボリュームある胸、丸みを帯びた裾口をしています。欧州人らしく、イタリア風の柔らかいスーツです。

欲を言えば、袖丈を若干短く、シャツが見える長さにすれば、更に良い見栄えになります。

他方、安倍総理のお洋服はA-Cのいずれを見ても出来が悪いとしか言えません。ラペルはぺったりとしており、ボリュームが全くありません。裾口は外に向かって跳ねています。典型的な機械縫製の既製服です。

もう一つ可能性がありました。安倍元総理はアメリカ在住の経験が長かったということで、オーダーで「かなり大きめ+この特徴」を敢えて注文している可能性があります。その場合、縫製は手縫いでも、見え方が既製服になります。

服は大きいのにお腹が足りない

なぜか安倍総理は3つボタンのお洋服をよく身に着けられるようですが、これらA-Cの3つボタンは、全て「2つ掛け」の服です。それにも関わらずBCでは「1つ掛け」にしています。これもお腹にサイズを合わせているためだと思います。

Cで顕著ですが、脇の下、腰ポケットの上辺りに皴が出ています。これはお腹の部分に布がとられているためです。3つボタンが好みであるのなら、「3つボタン1つ掛け、段返り」のものとするべきでしょう。

意図と印象の不一致

安倍総理は今年53歳(!)だそうです。若々しさをを強調するため、3つボタン2つ掛けを着用されているのかもしれません。しかし、体形補整のない既製服を着用されているため「お腹」が目立って仕方なく、若々しさがありません。野暮ったく、田舎臭く見えます。

また、Vゾーンが浅く狭すぎます。衿幅とのバランスがとれていません。重心が上がり、コートの印象に近くなります。Bのサルコジ国務大臣も3つボタンですが、全く印象が異なります。

安倍総理は顔が少し大きい方ですが、このようなデザインは、政治家として全く損な印象である「未熟さ」を強調してしまいます。ABのバローゾ委員長、サルコジ国務大臣のお洋服と見比べて頂ければ一目瞭然だと思います。

安倍総理の服が作り出す印象、これは大変皮肉なことに安倍総理の天敵、金正日氏の洋服の印象と同じです。…書いていて思いましたものの、安倍総理は大変に服で損をされていると思います。安倍総理への批判は、服を変えるだけで少しくらい減るのではないかと思えてきました。

最近、Cool Bizで着用されている安倍総理のジャケットは、随分とセンスの良いものになっていますが、これらスーツは大損であると思います。政治家として損な方向にしか作用しておらず、大変に勿体なく思います。

麻生大臣, 小泉前首相

「日本にとって中南米の意味を問う」
平成19年7月6日

ナルィシュキン・ロシア副首相との会談
平成19年7月2日

他方の麻生大臣です。今年66歳であるそうです。どうしてこう、若々しく見えるのか不思議です。写真は全て外務省からです。基本的な服のデザインは、至って普通です。深めのVゾーン、2つボタン、極めてオーソドックスですが、生地の色柄/着こなしに面白みがあります。

ハリリ・アフガニスタン副大統領と
麻生大臣 平成19年6月20日

モンゴル首相との会談,
平成15年11月21日

服の基本的なシルエットは年齢/体形/地位相応ですから、見ていて無理がありません。無理がない = 安心感がある、落ち着きがあるという印象が出てきます。他方、老けて見えるという欠点が出てきますが、政治家でこれが欠点になる場合というのは、むしろ少ないような気がします。

この方は生地の色柄や着こなしに幅があります。特に明るい系統の紺や、明るめのグレー、白に近いライトグレーまで着用します。

また、最上段の写真のように、経団連会館でも冒険的な着用をします。おそらく、この多様性が洒落モノ、若々しいという印象を生むのでしょうね。多様性には若々しさや覇気、陽気さが感じられます。

グレーといえば、小泉前首相もかなり頻繁にグレーの服を着用していました。服にはかなり無頓着のように思いましたが、小泉前首相もかなり多様な服を身に着けていました(エルビスの格好をしてみたり)。

多様性は力

麻生大臣や小泉前首相には人気がある、または人気がありましたが、この二方に共通するのは多様性かもしれません。体形や年齢、地位に反しない無理のない姿、かつ多様性ある姿に力強さや若々しさを感じたように思います。若々しさや力強さは年齢ではないとつくづく思いましたところ、政治家の着用を見るというのは良い思いつきであったように思います。

ところで、…今回、初めて大量に政治家の写真を見ました。その中で、飛び抜けた存在感、力強さがあり、政治家の写真として際立ったものがありました。最後にその写真をお借りして、今回の更新のご容赦をお願いいたしたく思います。

2007.07.25