アンコン(un-constructed)

非構築的な

普通、紳士服には芯や裏地、肩パットなどを外して、柔らかくカジュアルに仕立てるジャケットをアン・コンストラクテドと呼びます。un-constructed つまり、非構築的なという意味になります。非構築的、なんともヤヤコシイ言葉使いですが、要は「きっちり作らない」という事です。仏語のDecontracteと同義で、仏語ではさらに"Relaxed" =くつろいだ という意味も持っています

un-constructed jacket

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以前、ご紹介致しましたが、とにかく柔らかく、羽織る感覚のジャケットです。この写真ではわかりにくいですが、芯は唯一、襟にだけ使われており、それ以外では全く使っておりません。毛芯を使い、徹底的にシルエットを保とうとする英国風の完全な逆向きの服ですね。

アン・コンストラクテド・ジャケット、いつしかアンコンと呼ばれるようになります。1970年代に英国調に対するアンチテーゼとしてイタリアで登場し、これを英国調と融合させていけば、今のイタリアのクラシコ・スタイルになっていきます。

日本では英国調、技術重視のテーラーが多かったため、デザイン先行のこのような服を嫌うテーラーが多かったものです。むろん、英国でも同様でした。ですから、1970年以後、しばらくは英国紳士服の本場、世界最高のテーラーが集まるサビルローも慢性的な不振に悩んでいました。いわば、「まるでよろいのようだ」と、消費者の方々に敬遠されてしまったわけです。

この、サビルローの危機を救ったのが実はイギリスの都市計画の規制緩和だったいう話があったりもします。その結果、R.Jamesに脚光があたったとも言われるのですが、ずいぶんと古い話で記憶が定かでありません。どこかに当時、英国研修旅行時の写真があったはずなのですが。また見つけ次第、載せたいと思います。

英国調のアンチテーゼとしてアンコン、ちょっと間の抜けた名前のわりに、実は大きな流れの変化を来したデザインだったわけですね。量販店で購入すると、往々にして予想以上に見窄らしくなる可能性が大きいのですが、これはいくらアンコンだとしても、裁断とデザイニングに技術が要求されるからです。

・・・ややこしい話はさておいても、こんな指で引っ掛けられる服、これはこれでやはり魅力的ですよね。実はこの服、展示会用の見本にと作って、私がその場で着ていたものです。しかし、来店いただいた、とあるお客様に「これでなければイヤだ」と、その場でお買い上げされてしまいました。

ありがたいのですが、私も気に入っていましたので、ちょっと残念です。

2004.5.12